第五段 不幸に愁にしづめる人の

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不幸に愁にしづめる人の、頭おろしなど、ふつつかに思ひとりたるにはあらで、有るかなきかに門さしこめて、待つこともなく明し暮したる、さるかたにあらまほし。

顕基中納言の言ひけん、配所の月、罪なくて見ん事、さも覚えぬべし。

口語訳

不幸にあって悲しみ沈んでいる人が頭をおろして出家するなど、軽率に思いこんでやったのではなく、いるのか、いないのかわからない様子に門をとざして、世の中に期待することもなく明かし暮らしている。そういうあり方こそ、好ましい。

顕基中納言が言ったという、配所の月を、罪の無い身の上で見たいという事。そんなふうに思われることだ。

語句

■不幸に 不幸にあって。 ■ふつつかに 軽率に。 ■思ひとる ■かた ■顕基中納言 源顕基(1000-1047)。醍醐源氏、安和の変で失脚した源高明の孫で、権大納言・源俊賢の子。後一条天皇の側近として仕えるが、後一条天皇崩御にともない出家。大原山・横川・醍醐に隠棲する。法名円照。朝夕琵琶を弾きつつ、配所の月を流されていない身の上で見たいと歌ったという。 ■配所の月 流された配流先で見る月。

メモ

■顕基中納言 配所の月
■追い出し部屋も気持ち次第。

朗読・解説:左大臣光永

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