第八十一段 屏風・障子などの絵も文字も

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屏風・障子などの絵も文字も、かたくななる筆様(ふでよう)して書きたるが、見にくきよりも、宿の主(あるじ)のつたなく覚ゆるなり。大方も持てる調度にても、心おとりせらるる事はありぬべし。さのみよき物を持つべしとにもあらず。損ぜざらんためとて、品(しな)なくみにくきさまにしなし、めづらしからんとて、用なきことどもし添へ、わづらはしく好みなせるをいふなり。古めかしきやうにて、いたくこととしからず、費(ついえ)もなくて、物がらのよきがよきなり。

口語訳

屏風・障子などの絵も文字も、見苦しい筆運びで書いたのは、見にくいというより、宿の主人がくだらなく覚えるものだ。およそ持っている道具類によっても、その持っている主人の人柄がくだらなく思えることはあるようだ。(といっても)そう高級な物を持つべきというわけではない。破損しないためということで、下品に醜く仕立て、めずらしいだろうと、いりもしない物を多く添えて、うるさく趣向をこらしているのを言っているのだ。古めかしいようであって、そう大げさでなく、費用もかからず、品質がよい物がよい。

語句

■障子 部屋の内外を仕切る物。衾・衝立・明り障子など。現在は主に明かり障子を「障子」というが、ここでは文字を書く話だから明かり障子ではない。 ■文字 衾に歌などを書いて飾りにした。 ■かたくななる 見苦しい。 ■大方 およそ。 ■心おとり 主人がよくないように思われること。 ■しなす 仕立てる。わざわざ作る。 ■ことことし おおげさな。仰山な。 ■費 出費。

メモ

●百人一首 宇都宮頼綱
●兼好は厳しい。怒られそう

朗読・解説:左大臣光永

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