平家物語 三 鱸

本日は『平家物語』の第三回「鱸」を読みます。

平清盛の急激な出世と、平家一門の繁栄。その背後には熊野権現のご利益があった、という話です。

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有明の月も明石のうら風に浪ばかりこそ寄ると見えしか

(有明の月が明るく輝いていた明石の浦風に、波だけが夜の闇の中、寄せると見えましたなあ)

雲居よりただもりきたる月なればおぼろけにてはいはじとぞ思ふ 

(同僚の女房たちのからかいに答えて。雲の上からただ漏り来た月ですから、気安くその出処を言うまいと思う)

■其子ども 忠盛の子供ら『尊卑分脈』によると6人。『源平盛衰記』『桓武平氏系図』では忠重を加えて7人。清盛は長男。 ■諸衛佐 「諸衛」は六衛府=左近衛府・右近衛府・左右衛門府・右衛門府・左兵衛府・右兵衛府。左右近衛府の次官を中将・少将といい、左右衛門府・左右兵衛府の次官を「佐」という。 ■有明の月も明石のうら風に浪ばかりこそ寄ると見えしか 有明の月が明るく輝いていた明石の浦風に、波だけが夜の闇の中、寄せると見えましたなあ。「有明」はまだ空に月がありながら夜が明ける時間帯。残月のある夜明け。「有明」の「明」に「明るい」を、「明石」に地名の明石と「夜を明かした」を掛ける。「しか」は助動詞「き」の已然形。「こそ」の結び。 ■金葉集 五番目の勅撰和歌集。白河院の勅命で源俊頼が編んだ。白河院の晩年に成立。 ■仙洞 仙洞御所。院の御所。 ■女房 宮仕えする者で専用の局を与えられていた者。 ■妻に月出したる 「端(つま)の当て字。端に月が出ている絵が描いてある。 ■雲居よりただもりきたる月なればおぼろけにてはいはじとぞ思ふ 女房たちのからかいに答えて。雲の上からただ漏り来た月ですから、気安くその出処を言うまいと思う。 ■薩摩守忠教 忠盛の末子。母は不明。 ■すいたりければ 風流であるので ■刑部卿 刑部省の長官。正四位下相当官。刑部省は裁判・処罰を行う。八省のひとつ。 ■仁平元年 1153年。 ■宇治の悪左府 藤原頼長。兄忠通との対立から、保元の乱で崇徳上皇方について戦死。 ■安芸守 久安元年(1149)安芸守、保元元年(1156)播磨守、同3年(1158)太宰第弐。 ■信頼卿が謀反 平治元年(1160)12月、平治の乱。藤原信頼が源義朝と組んで信西を倒し、二条天皇・後白河上皇を幽閉したが平清盛によって破られた。 ■正三位 永暦元年(1160)清盛正三位。 ■宰相 参議の別称。参議は大納言・中納言につぐ重要な役職で、三位・四位から有能の人が選ばれた。 ■衛府督 衛府は宮中警護に当たる役所。左右近衛府・左右右衛門府・左右兵衛府。督は次官。 ■検非違使別当 検非違使庁の長官。検非違使庁は都の治安維持にあたる。 ■相丞 左大臣・右大臣 清盛は仁安元年(1166)内大臣、翌年従一位・太政大臣。左右近衛府各一人、近衛各一人を随身とし、輦車を許された。 ■牛車輦車の宣旨を蒙って 牛車は牛が引く車。輦車は人が引く屋形車。天皇の宣旨が下ると乗ったまま大内裏十二門の出入りが許された。 ■執政の臣 摂政関白の異名。 ■太政大臣は一人に師範として 天子に対する師範となって。 ■四海に儀けいせり 天下にひろく模範をしめす。 ■陰陽をやはらげおさむ 天地の運行を円滑にすすむようにする。 ■其人にあらずは則ちかけよ 則闕の官。太政大臣に適任者がいない場合は空席にせよと。 ■先達 案内役の修験者。 ■周の武王 『史記』には、武王が紂王を倒すために船出したところ、舟に白魚が飛び込んできた。武王はこれを吉兆として祀ったと。 ■十戒 仏教でしてはなならい十の戒め。殺生・偸盗・邪淫・妄語・綺語・悪口・両舌・貪欲・瞋恚(怒り)・邪見(または愚痴)。 ■精進潔斎 身を清め、魚肉をくらわず、物忌をすること。 ■調味して 料理して。 ■子孫の官途 子孫の出世の道。 ■九代の先蹤 平高望より忠盛以前の平氏が諸国の受領にとどまり出世できなかったこと。

次回「禿髪」に続きます。

朗読 平家物語

朗読・解説:左大臣光永