平家物語 十九 西光被斬

『平家物語』第十九回「西光被斬(さいこうがきられ)」です。

多田蔵人行綱の密告により打倒平家の計画が発覚し、清盛は首謀者を次々と逮捕。西光法師は清盛の前に引っ立てられると、清盛を成り上がり者とののります。

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内容

流罪になった天台座主明雲が、山門の大衆に奪い返されたことに後白河法皇は怒る。

西光法師は、「こんなことを許せば世の乱れです」と後白河法皇に説く。

天台座主明雲は延暦寺大衆の意見が割れているのを見てわが身の行く末を案ずるが、院から流罪の処分はなかった。

一方、多田蔵人行綱(ただのくらんど・ゆきつな)は、平家の繁盛を見るに打倒平家の計画に実現性は無いと考え、密告することを決意。

西八条の屋敷で、清盛に謀反の計画と、参加者の名前を、洗いざらい話す。

清盛はおおいに怒り、一門に号令をかけ、侍どもを召集。

明くる六月一日、清盛は院の御所に遣いをやり、平家に対する謀反の計画があるので、逮捕して尋問するつもりです。法皇は手出しされませんようと奏上する。

法皇はあわてふためく。

報告をきいて清盛は、行綱の話がまことだと確信し、各地に人を遣わし、謀反に加担したものを捕らえる。

首謀者、新大納言成親卿に呼び出しをかける。計画がばれたとは夢にも思わぬ成親卿が西八条へ向かうと、屋敷のまわりは軍馬がひしめいている。

盛親卿は取り押さえられ、西八条の屋敷の一室に押し込められる。

俊寛僧都、平判官康頼など、謀反の参列者が捕まる中、西光法師は身の危険を感じ、院の御所へ向かうが、途中、平家の侍にからめとられ、清盛の前に引き出される。

しかし西光はひるむことなく、清盛を成り上がり者と罵る。

怒った清盛は西光に苛烈な拷問を加え、計画を白状させ、口を割いた後、斬首する。西光の子息らも、それぞれに斬首された。

語句

■宸襟 天子のお心。 ■讒臣は国を乱る 出典不明。 ■叢蘭茂(も)からんとすれども… 「叢蘭」は群生する蘭。「叢蘭欲茂、秋風敗之、王者欲明、讒人蔽(おおう)之」(『貞観政要』)。 ■さのみ そうそういつも。 ■はらまれて 生まれて。 ■ニ心 座主を奪い奉ろうという心と、院宣に従って座主を流罪にしようという心。 ■内義 内々の話し合い。 ■義勢 見せかけの勢い。 ■多田蔵人行綱 清和源氏。源満仲七代の孫。頼盛の子。摂津国多田庄(兵庫県川西市)に住んだ。 ■かたびら 直垂の下に着る白い衣。 ■目うちしばたたいて 目をぱちぱちさせて。精神が動揺しているさま。 ■かへり忠 裏切り。 ■命いかうど 命生きようと。 ■主馬判官は 主馬寮の頭で判官を兼ねる者。主馬寮は乗馬や馬具を司る役所。判官は検非違使尉(検非違使の第三等の官)。 ■中門の廊 寝殿造の中門あたりの廊(渡り廊下)。 ■一向 ひたすら。まったく。 ■子細にやおよび候 あれこれ細かいこと言うまでもない=もちろんでございます。 ■とふるまうて …というふうに振る舞って。 ■なまじひたなる事 なまじっかなこと。言わなくてもいい余計なこと。 ■とり袴して 袴の裾を手で持ち上げて。あわて急いでいるさま。 ■貞能 平貞能。左兵衛尉家貞の子。 ■三位中将知盛 清盛の四男。仁安3年(1168)権左中将、安元3年(1177)従三位。 ■頭中将重衡 清盛の五男。治承4年(1180)蔵人頭、同5年左近衛中将。 ■左馬頭行盛 清盛の孫。基盛の子。 ■きっと すぐに。急いで、の意と確かに、確実にの意。 ■信業(のぶなり) 後白河院の近臣、大膳大夫平信業。 ■よな …はな。念を押す言い方。 ■尋ね沙汰仕るべし 尋問して処罰いたします。 ■しろしめさるまじう候 干渉なさらないでぐたさい。 ■あは ああ。おお。 ■飛騨守景家 藤原忠清の弟。悪七兵衛景清の叔父。 ■雑色 蔵人所や院の御所で雑役をつとめる無位の役人。あるいは公家や武家で下働きをした下男。 ■中御門烏丸 中御門大路と烏丸小路の交差するところ。現京都御苑から東南、烏丸丸太町あたり。 ■ないきよげなる 「なえ清げなる」の転か。「なえ」はなよなよした。しなやかな。 ■ひきつくろはれたり 正装なさって。飾り立てて。 ■あるべうもなし 「さあるべくもなし」の略「あるべくもなし」の音便。そんなことはしなくていい。 ■一間なる所 一間四方の部屋。一間は柱と柱の間の距離。6尺5寸(約2メートル)。 ■つやつや 全く。 ■近江中将蓮浄… 以下の名は「鹿谷」末尾に見える。 ■奏すべかんなる 「奏すべくあるなる」の転。何事を奏上しようというのか。 ■さないはせそ な~そは禁止。そんなことを言わせるな。 ■ちうにくくッて 宙にくくって。 ■日のはじめより 最初から。 ■根源与力の者 陰謀の中心人物。 ■坪 中庭。 ■大床 寝殿造の大庇。 ■なれるすがたよ なれの果てよ。 ■しやつ あやつ。相手を罵っていう言葉。 ■しやッつら 「しやッ」は罵り嘲る意味の接頭語。 ■下臈のはて 下臈の中にも最低の。下臈は官位の低い者。卑しい者。 ■なさるまじき官職をなしたび 本来与えられるはずもない官職をお与えになり。 ■過分のふるまい 身に過ぎたふるまい。 ■見しにあはせて (浄海は)見ていたがそれに加えて、 ■あやまたぬ 過失のない。無実の。 ■流罪に申しおこなひ 流罪を申告し、実際に流罪に処させ、 ■けいき 様子。 ■ゐなほり 座り直して。 ■さもさうず 「さも候はず」の転。そんなことはない。 ■執事(しっし) 院庁の政務を行う長官。別当も同じ。 ■耳にとどまる事 耳に聴いて注意を起こされること。 ■故中御門藤中納言家成卿 藤原家成。大富豪。清盛が少年時代、家成のもとに仕えた。 ■高平太 高下駄をはいた平家の太郎。「中御門中納言家成卿の播磨守にておはせし時受領の鞭を取り、朝夕に柿の直垂に縄緒の足駄はきて通ひ給ひしかば、京童部は高平太と言ひて咲(わら)ひしぞかし」(『源平盛衰記』五)。 ■保延の比 保延元年(1135)忠盛が海賊を討った功績により清盛は従四位下となる。 ■侍品(さぶらひほん) 侍の身分。 ■傍例 慣例・しきたり。 ■左右(さう)なう 簡単には。 ■松浦太郎重俊 『平治物語』に信頼を斬る。 ■白状 自白の状。 ■前加賀守師高 師高が尾張の井戸田へ流された経緯は「内裏炎上」にある。 ■小胡麻郡司維季(をぐまのぐんじこれすえ) 小胡麻は小熊、小隈とも。美濃と尾張の境。岐阜県羽島市小熊町の辺。 ■いふかひなき者 口に出して言う価値もない、どうしようもない者。 ■いろふ 関わる。 ■果報 因果応報。前世の報い。西光らは前世でよい行いをしたために現世で身分高くなったが、それも尽きたということ。 ■神罰冥罰 神と仏が人知れず下す罰。

……

平清盛の苛烈な性格がよく出ている回です。西光法師のとうとうと清盛を罵る長台詞もすばらしいです。

次回「『平家物語』二十 小教訓(こぎょうくん)」に続きます。

朗読 平家物語

朗読・解説:左大臣光永