『徒然草』 諸縁を放下せよ!

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こんにちは。左大臣光永です。街路樹もだいぶ赤みがさしてきました。
日に日に肌寒くなる昨今、いかがお過ごしでしょうか?

私は今週金曜日(11/27)東京多摩永山公民館で
「声に出して読む『徒然草』を開催します。

東京近郊の方はぜひ遊びにきてください。
詳しい案内はこちらです。
http://sirdaizine.com/CD/kouenInfo.html

本日はこれにあわせて、『徒然草』についての話です。

▼音声が再生されます▼

『徒然草』で私が大好きなのは、人と群れることを、徹底して、ぶった切ってる所です。ほんと、スッキリします。

つれづれわぶる人は、いかなる心ならん。まぎるるかたなく、ただひとりあるのみこそよけれ。

世にしたがへば、心、外(ほか)の塵にうばはれてまどひやすく、人にまじはれば、言葉よその聞きに随ひて、さながら心にあらず。人に戯(たわぶ)れ、ものにあらそひ、一度はうらみ、一度はよろこぶ。その事定まれる事なし。分別(ふんべつ)みだりにおこりて、得失やむ時なし。惑ひの上に酔(ゑ)へり。酔(ゑひ)の中(うち)に夢をなす。走りていそがはしく、ほれて忘れたる事、人皆かくのごとし。いまだ誠の道を知らずとも、縁をはなれて身を閑(しづか)にし、ことにあづからずして心を安くせんこそ、暫(しばら)く楽しぶとも言ひつべけれ。「生活(しょうかつ)・人事(にんじ)・伎能(ぎのう)・学問等の諸縁をやめよ」とこそ、摩訶止観(まかしかん)にも侍れ。

第七十五段

【口語訳】

やることが無く一人でいるのを苦痛と感じる人は、どういう心なのだろう。心が乱されるものが無く、ただ一人でいることこそ、よいことだ。

俗世間に従がえば心が俗世間の塵に奪われて惑いやすく、人と交際すれば自分の言葉も相手がどう取るだろうかと相手の反応ばかり気になって、自分そのままの心ではなくなる。

人と戯れ、相手と争い、一度は恨み、一度は喜ぶ。その心の動きは安定することが無い。ああだろうかこうだろうかという思い悩みがみだりに起こって、損得勘定がやむ時が無い。

迷いの上に酔っているのだ。酔いの中に夢を見ているのだ。走って忙しく、我を忘れている事は、誰もこういうものだ。

いまだ真理に至る仏の道を知らないといっても、俗世間との縁を離れて身を静かにし、物事に関与せず心を安らかにするのが、かりそめの人生をせめても楽しむとも言えるだろう。「生活・人事・技能・学問のあらゆる縁をやめよ」と摩訶止観にも書いてある。

ただひとりあるのみこそよけれ

いいですね。素晴らしいじゃないですか!こういうことを、ちゃんと学校でも教えないといけないですよ。「社会性ガー」「人間関係ガー」と、くだらんこと教えてる場合じゃないんですよ。

思えば学校という場所は「仲間、仲間、絆、絆、チームワーク、チームワーク」と、もうアホウのよう連呼する場所でした。あそこまで逝くともう洗脳です。

そして少年ジャンプではワンピースで「仲間!仲間!絆!絆!」と狂ったように吠えまくっている。

そんな洗脳を受けて大人になると「人脈には自信あるんだ~」「仲間ってサイコー」とか言いながらfacebookで「いいね」をポチポチ押す量産型の人間ができてしまうんです。

つながるな!!

一人になれ!!

孤独に深入りしろ!

今こそ必要なのは、この考えです。新しい発想・発明、大きな改革というものは、みんなでワイワイ言って生まれることはありません。

歴史上の大きな発見・発明はほぼすべて、孤独な個人の脳から生まれています。チームから、生れるものではないんです。

しかし社会は「チームワーク、チームワーク、仲間、仲間」と狂ったように目を血走らせて、洗脳にかかってくる。だから、あえて強く、言う必要があります。

つながるな!!

一人になれ!!

孤独に深入りしろ!

もちろん、アイデアを形にし、運用する上では多くの人の手を借りる必要があります。しかし、最初の発想の火をつけるのは常に、個人です。常に、個人です。集団ではなく、個人です。チームではなく、個人です。

そういうことを、ちゃんと教育していく必要があります。だから今こそ、『徒然草』なんですよ!

世の人あひ逢ふ時、暫(しばら)くも黙止(もだ)する事なし。必ず言葉あり。その事を聞くに、多くは無益(むやく)の談なり。世間の浮説(ふせつ)、人の是非、自他のために失多く、得少なし。これを語る時、互ひの心に無益の事なりといふ事を知らず。

第百六十四段

【口語訳】

世間の人が互いに逢う時、ほんの少しでも沈黙している事が無い。必ず言葉がある。その事を聞くと、多くはろくでもない話である。世間のいい加減な噂話、人の是非、お互いにとって失うものは多く得るものは少ない。これを語る時、互いの心にろくでもないという事を知らないのだ。

私のようにフリーランスで仕事してると、しょっちゅう変な連絡が来ます。

「とにかく会いましょう!」
「会って議論しましょう!」
「ブレストしましょう」

ほんとアホかと思いますね。目的も無しにただ会っても、そこに何も生じません。具体的な仕事の依頼、もしくは私に何か聞きたいことがあるなど、そこに目的が見えなければ、100%無視してます。お互いに、時間は大切ですからね。

そもそも私は「議論」とか「ブレスト」大嫌いです。

「議論」や「ブレスト」はある問題について前提知識がある者同士が、お互いに十分にアイデアを練って、考えに考えて、もう一人ではどうにもならない、脳から血が出るというくらい考え抜いた末に、会って話すから、意義あるものになるんです。

しかし、会社の会議などは、ほとんどそういう状況ではありませんよね?

各人が前提知識を共有しているわけでもなく、アイデアをとことん突き詰めているわけでもない。だから、ムダなんです。そんな会議は、やらないほうがいいんです。「とにかく会いましょう」「ブレストしましょう」と言ってくる人も、それと同じです。

中途半端に会ってダラダラ話しても意味は無いです。一人でアイデアをトコトン煮詰めるほうが100億倍大事です。

人間の儀式、いづれの事か去り難からぬ。世俗の黙(もだ)しがたきに随ひて、これを必ずとせば、願ひも多く、身も苦しく、心の暇もなく、一生は雑事(ぞうじ)の小節(しょうせつ)にさへられて、むなしく暮れなん。日暮れ塗(みち)遠し。吾が生(しょう)既に蹉駝たり。諸縁を放下(ほうげ)すべき時なり。信をも守らじ。礼儀(れいぎ)をも思はじ。この心をも得ざらん人は、物狂ひとも言へ、うつつなし情なしとも思へ。毀(そし)るとも苦しまじ。誉むとも聞き入れじ。

第百十二段

【口語訳】

世俗のしきたりは、どれも去り難いものばかりだ。無視できない世俗の習慣に従って、これを必ずやらねばならないと考えると、願いも多く、身も苦しく、心に暇なく、一生はこまごました雑事の小さな義理立てにさえぎられ、空しく暮れてしまうだろう。

日は暮れたが、いまだに道は遠い。わが人生はすでに行き詰った…そういうことに、なるのである。だから、あらゆる縁を捨て去るべき時だ。信用など守らなくていい。礼儀も思わなくていい。この気持ちを理解できない人は、物狂いと言はば言え。正気を失っているとも、人情に欠けるとも思うがいい。人が文句を言ったって、苦しむまい。誉めても聞き入れまい。

いや~いいこと言いますね兼好法師。ほんと、しびれちゃいます。

ブラック企業をやめられないんですけど~って、そんなバカなって話なんですよ。やめりゃいいんです。やめられないのは、確かにブラックだけど、あの先輩にお世話になったからとか、義理があるからとか、今やめると会社に迷惑がかかるとか。ばかばかしいことなんです。

世話になった先輩とか会社への義理とか、どうでもいいんです。そんな義理は土足で蹴りたくり、踏みにじり、ツバを吐きかけ、飛び出さなければいけません。

西行法師は出家した時、縋りつく幼子をドガーーッと縁側から蹴り落として、出ていったのです。ましてブラック企業なら、蹴り落とし踏みにじるに、何の躊躇も無いのは当たり前です。

学習講座のお知らせ

■声に出して読む『徒然草』
http://sirdaizine.com/CD/kouenInfo.html

11/27(金)13:30~東京多摩永山公民館にて開催します。
会場のみなさまと御一緒に『徒然草』の原文を読み、
私が解説します。リズムのいい原文を大きな声で読んでいるだけでも
楽しいはずです。そして兼好法師の毒舌まじりの人生論には
「うんうん、わかるなあ」という所が多いはずです!

東京近郊の方はぜひ遊びにいらしてください。

発売中

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http://sirdaizine.com

左大臣光永がお話しました。
ありがとうございます。ありがとうございました。

朗読・解説:左大臣光永