舒明天皇の歌

こんにちは。左大臣光永です。週の半ば、いかがお過ごしでしょうか?

私は先日、町田から小田急線で相模大野を経由してぐるっと片瀬江の島まで行ってみました。ふだん鎌倉方面はJRで行くんですが、違う経由で行くのも楽しいですね。窓からの景色に、わくわくしました。

さて明後日(10/28)1330~東京多摩永山公民館で、私左大臣光永による「足利将軍家の興亡」を開催します。今回は第一回足利尊氏です。私の説明に加え、会場のみなさまと『太平記』などの本文を声を出して読みますので、頭より体で歴史の名場面を体感することができます。東京近郊の方はぜひご来場ください。
http://www.tccweb.jp/tccweb2_024.htm

そして、先日再発売しました。「聴いて・わかる。日本の歴史~飛鳥・奈良」。すでに多くのお買い上げをいただいています。ありがとうございます。
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特典の「解説音声 額田王の歌」は、11月10日お申込みまでです。お申込みはお早目にどうぞ。

本日は『万葉集』より、有名な舒明天皇の国見の歌ほか一篇です。

↓↓↓音声が再生されます↓↓

http://roudoku-data.sakura.ne.jp/mailvoice/Manyo01_02.mp3

舒明天皇の歌

天皇、香具山に登りて望国(くにみ)したまふ時の御製歌(おほみうた)

大和には 群山(むらやま)あれど とりよろふ 天(あめ)の香具山 登り立ち 国見をすれば 国原(くにはら)は 煙(けぶり)立ち立つ 海原(うなはら)は かまめ立ち立つ うまし国そ あきづ島 大和の国は

【語句】
■とりよろふ とりわけよい。またはすべてのものがよりそっている。宮の近くにある。■天の香具山 大和三山の一つ。持統天皇の歌や『古事記』天の岩戸の話でも有名。 ■望国 為政者が山の上など高い所に立ち、四方を見渡す宗教的・政治的行事。 ■煙 仁徳天皇が高台に登ると民の家々から煙が上がらないので、民は貧しいのだと見て三年間租税を免除した故事を思わせる。 ■立ち立つ あちこちに立つ。 ■かまめ かもめの古い言い方か。 ■うまし 素晴らしい、見事だ。 ■あきづ島 大和の枕詞。「あきづ」は蜻蛉。『日本書紀』では神武天皇が大和の丘に登って国見をした際に、蜻蛉が交尾しているようだと発言したとされる。『古事記』では雄略天皇の腕をアブが噛んだが、トンボがアブを捕えて飛び去ったので雄略天皇がトンボをほめたたえたとある。

【現代語訳】
大和にはたくさんの山があるが、とりわけ素晴らしい天の香具山に登り立って国見をすれば、陸地からは家々の竈の煙があちこちで立ちのぼり、海原ではカモメがあちこちで飛び交っている。素晴らしい国だよ大和の国は。

【解説】
34代舒明天皇は、30敏達天皇の孫。先代の推古天皇の崩御に伴い、蘇我氏の強い後押しで即位。飛鳥の岡本宮で天下を治められました。

この舒明天皇の国見の歌は『万葉集』の中でも特に有名です。雄大な響きじゃないですか。「国見」は為政者が山や高台に上って支配地域を見渡すことです。我こそはこの国の支配者ぞ。国民を治めていくぞと、そういうデモンストレーションの意味がありました。

ここでは天の香久山に上った舒明天皇が、大和盆地を見渡して国見の歌を詠んでいるのです。正面には畝傍山。右手には耳成山。それと香久山をあわせて大和三山といいます。

中にも香久山は、高天原から下りてきたと言われる聖なる山です。頭に「天の」をつけるのは、そのためです。空からすーーっと下ってきたイメージですね。

「かまめ」はかもめの古い言い方です。大和盆地の真ん中で海の無い所にかもめがいるのは不思議ですが、周りには埴安(はにやす)の池、磐余の池、耳梨の池、鷺栖(さぎす)の池、そして磐余(いわれ)の池など。池が多いです。そこで何か水鳥が舞い飛んでいたかもしれません。

「うまし国よ」は、すばらしい国だよ。「あきづ島大和の国は」…「あきづ島」は、「大和」という地名にかかる枕詞です。「あきづ」は蜻蛉。『日本書紀』では神武天皇が大和の丘に登って国見をした際に、蜻蛉が交尾しているようだ。そう言われたと書かれています。

大和盆地をパノラマ状に見渡すと、山々が点々としている、その様子が、トンボがつながりあっているさまに見えたんでしょうか。交尾、ということから、農作物の豊作・豊饒を祈ることにも、つながっていくわけです。

声に出して気持ちいい、雄大な歌です。


舒明天皇の有名な歌をもう一首。

夕されば小倉の山に鳴く鹿は今宵は鳴かずい寝にけらしも

夕暮れになると、小倉の山にふだんは鹿が鳴くのだが、今夜は鳴かない。もう寝てしまったのかなあ。

しっとりとした、夜の静けさが伝わってくるじゃないですか。牡鹿が牝鹿を求めて鳴く、そのわびしい声も、今夜は聞こえない、もう寝てしまったのだろうか。

小倉山の場所は正確には不明ですが、奈良県桜井市の外鎌山(とかまやま)と考えられています。ふもとには歌の作者・舒明天皇の陵があります。

飛鳥は大伴旅人の歌についてお話しします。お楽しみに。

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聴いて・わかる。日本の歴史~飛鳥・奈良
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第一部「飛鳥時代篇」は、蘇我馬子や聖徳太子の時代から乙巳の変・大化の改新を経て、壬申の乱まで。

第二部「奈良時代篇」は、長屋王の変・聖武天皇の大仏建立・鑑真和尚の来日・藤原仲麻呂の乱・桓武天皇の即位から長岡京遷都の直前まで。

教科書で昔ならった、あの出来事。あの人物。ばらばらだった知識が、すっと一本の線でつながります。

特典の「解説音声 額田王の歌」は11月10日お申込みまでの早期お申込み特典です。お申込みはお早目にどうぞ。
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本日も左大臣光永がお話ししました。ありがとうございます。ありがとうございました。

朗読・解説:左大臣光永

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