『万葉集』志貴皇子の歌

先日、山梨の武田神社に行ったら、「今年生まれた子供たち」みたいなのがボードに掲げてあって、見ると、キラキラネームばかりなんですよ。キャデラックとか、ぴかちゅうとか、そういう感じの…。「某子」とか「某夫」みたいな普通の名前が2、3しかなく、ボードいっぱいに貼られた名前のほとんどがキラキラでした。世も末です。

本日は『万葉集』より、志貴皇子の歌です。

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百人一首 全首・全歌人 徹底詳細解説
http://sirdaizine.com/CD/Ogura100info3.html

日本の歴史 飛鳥・奈良
http://sirdaizine.com/CD/His08.html

京都講演■京都で声を出して読む 小倉百人一首
http://sirdaizine.com/CD/KyotoSemi_Info.html

志貴皇子(しきのみこ)。38代天智天皇第七皇子。49代光仁天皇の父。光仁天皇即位後、春日宮御宇天皇(かすがのみやの あめのした しらす すめらみこと)の号を贈られ、田村天皇と呼ばれました。明るくさわやかな感じの歌が多いです。


明日香宮より藤原宮に遷居(うつ)りし後に、志貴皇子の作りませる御歌

采女(うねめ)の そで吹き返す 飛鳥風 都を遠み いたづらに吹く
(巻1・51)

飛鳥の宮で天皇にお仕えする采女の袖をひるがえして吹いていた飛鳥の風。飛鳥の都が遠くなったので、今はむなしく吹くばかりだ。

持統天皇8年(694)飛鳥清御原宮(あすか きよみはらのみや)から藤原宮(ふじわらのみや)に遷都します。遷都後、飛鳥の都は捨て去られ、日に日に荒れ果てていきます。長年くらした飛鳥の地を懐かしんで、そのすたれるのを惜しんで詠んだ歌です。

「采女」は天皇にお仕えする女官。「都を遠み」は「都が遠くなったので」という原因・理由。

ちなみに藤原京遷都は平安京遷都(794)ナクヨウグイス平安京のちょうど100年前です。ムクヨカサブタ藤原京とおぼえてください。


慶雲三年丙午(へいご)に、難波の宮に幸しし時、志貴皇子の作りませる御歌

葦辺(あしべ)行く 鴨の羽交(はがひ)に 霜降りて 寒き夕べは 大倭(やまと)し思ほゆ
(巻1・64)

歌意
葦の生えた岸辺を行く鴨の羽のあわせ目に霜が降りて、寒い夜は大和のことがしみじみなつかしく思われる。

慶雲3年(706)9月25日10月12日まで、文武天皇・持統上皇が難波宮に行幸しました。それに付き添った志貴皇子が詠んだ歌です。遠い難波の地にあって、大和をなつかしんでいるのです。難波宮は孝徳天皇の築いた長柄豊崎宮の跡と思われます。現在、大阪城の隣に大極殿址などが復元されています。

「羽交」は左右の翼が交わるところ。


鼯鼠(むささび)は 梢(こぬれ)求むと あしひきの 山の猟夫(さつを)に 会ひにけるかも
(巻3・267)

歌意
むささびは、止まるべき梢を求めているうちに、山の猟師に見つかってしまうことだな。

だから何だという感じですが、何か寓意がこめられているのでしょうか。


大原の この櫟葉(いつしば)の 何時しかと 我が思ふ妹に 今夜(こよひ)逢へるかも
(巻4・513)

歌意
大原のこの神聖な櫟葉(いつしば=イチイの葉)のように、いつしか逢いたいと思っていた私の愛しい人に、今夜逢えるのだなあ。

「大原」は飛鳥村大字小原の地。藤原氏の故地。


志貴皇子の懽(よろこび)の御歌一首

石激(いわばし)る 垂水の上の さ蕨の 萌え出づる春に なりにけるかも
(巻8・1418)

歌意
岩の上を走り流れる滝のほとりの早蕨が、萌え出す春になったなあ。

新春の宴会の席で喜びを詠んだ歌。「垂水」は滝のこと。


神名火の 磐瀬の杜の 霍公鳥 毛無の岳(おか)に 何時(いつ)か来鳴かむ
(巻8・1466)

神名火山の磐瀬の杜の 霍公鳥は毛無の岳にいつ来て鳴くのだろう。はやく来て鳴いてほしい。

「神名火」は神のまします山のこと。「磐瀬の杜」「毛無の岳」は所在地不明。

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百人一首 全首・全歌人 徹底詳細解説
http://sirdaizine.com/CD/Ogura100info3.html

小倉百人一首の全首を、歌人の経歴、歌人同士のつながり、歴史的背景などさまざまな角度から楽しく、詳しく解説した解説音声+テキストです。単に歌を「覚える」ということを越えて、深く、立体的な知識が身につきます。

日本の歴史 飛鳥・奈良
http://sirdaizine.com/CD/His08.html

飛鳥時代と奈良時代の事件や人物を年解説した解説音声とテキストです。メディアはdvd-romです。

第一部「飛鳥時代篇」は、蘇我馬子や聖徳太子の時代から乙巳の変・大化の改新を経て、壬申の乱まで。

第二部「奈良時代篇」は、長屋王の変・聖武天皇の大仏建立・鑑真和尚の来日・藤原仲麻呂の乱・桓武天皇の即位から長岡京遷都まで。

教科書で昔ならった、あの出来事。あの人物。ばらばらだった知識が、すっと一本の線でつながります。旅のヒントにもなります。

京都講演■京都で声を出して読む 小倉百人一首
http://sirdaizine.com/CD/KyotoSemi_Info.html

4/28(日)17時~京都駅八条口徒歩10分。長福寺にて。最終回。小倉百人一首の歌を会場のみなさまとご一緒に読み、解説していきます。86番西行法師~

朗読・解説:左大臣光永

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