正月

正月新年のはじめにその年の福をつかさどる年神さまを各家庭にお迎えし、お送りする行事。

元日を中心とした大正月(おおしょうがつ)、14日・15日を中心とした小正月(こしょうがつ)に大きく二分されます。

新年の豊穣や無病息災を祈願し、初詣、どんど焼きなどの行事が行われます。

初詣

正月に地元の産土神や氏神に参拝すること。しかし現在は氏神ととは関係なく、付近の有名な神社への初詣がふえています。

大晦日から正月にわたって参拝することを二年参りといい、一晩のうちに参拝する場合と、一度寝て、元旦にふたたび参拝する場合も二年参りといいます。

初詣は三が日まで、遅くとも松の内までにすませるべきとされます。2021年は新型コロナの影響で、一ヶ月間は初詣を受け入れる神社も多かったようです。

参拝の作法は、お賽銭を入れて鈴を鳴らしてから、2回お辞儀して、2回柏手を打ち、両手をあわせて祈ります。最後に1回深くお辞儀します。2礼2拍手1礼とおぼえましょう。

三が日

元日から3日までを三が日といい、大正月の中心となる期間です。三が日の間は男が台所仕事をするとか、餅を焼いてはならないとか、物を捨ててはならないなど、地域によっていろいろな風習があります。

松の内

各家庭で飾った門松や鏡餅を片付けるまでを松の内といいます。

期間は7日までが一般的ですが、地域によっては3日、7日、15日、20までと、さまざまです。

はずした松は保管しておき15日のドンド焼き、サイノカミ焼きで燃やす地域が多いです。

門松

門松は年神さまが降臨する依代であり、案内にもなるものです。年末に家の門前などに立てて、「松の内」とよばれる7日もしくは15日まで立てます。「神を待つ」を懸けています。

鏡餅

正月に床の間などに供える鏡餅。年神さまへのお供えであり、年神さまが降臨する依代にもなります。丸いのは古代の銅鏡のなごりで、大きい餅は太陽、小さい餅は月をあらわすとされます。

しめ縄

七五三縄、注連縄などと書き、「占める」を意味し、神聖な場所に不浄なものが入ることを禁じます。注連縄にはみかん、するめ、こんぶなど縁起物を飾り付けます。

屠蘇

元日に無病息災、長寿を祈って飲む薬酒。酒に屠蘇散を加えたもの。

年男

正月の行事を取り仕切る男を年男といい、大掃除にはじまり、正月の飾り付け、おせち料理を作ることまで、一切を取り仕切ります。一家の家長があたることが多いです。

若水

元旦に汲む水を若水といい、邪気払いや若返りの効果があるとされました。井戸から若水を汲むことを若水迎えといい、年男の仕事とされていました。しかし水道の普及によって、若水、若水迎えという言葉じたい、きかなくなりつつあります。

古くは立春の朝に汲んだ水を若水といいました。

初夢

元旦の夜から2日にかけて、その年に初めて見る夢。その内容によって一年の吉凶を占う風習があります。

「一富士、二鷹、三茄子」が縁起がよいとされ、それは富士が不死に、鷹が高いに、茄子が事を成すに通じるためです。

初夢によい夢を見るには枕の下に七福神の乗る宝船の絵をしいて、「ながきよの とをのねぶりの みなめざめ なみのりぶねの おとのよきかな」と回文を記すとよいとされます。

悪い夢を見た時には翌朝、宝船の絵を川に流して縁起直しをしたそうです。

おせち料理

正月料理で欠かせないおせち料理。もとは「御節供(おせちく)」といい、季節の変わり目「節」に、年神さまに捧げるものでした。神にささげた食物を人間も食べることで、体内に神の力を取り入れるという発想です。

正月は年神さまを迎えるため台所を騒がせてはいけないとも、火を使ってはならないともいわれ、そのため、三が日の間日持ちする、おせち料理が工夫されました。女性が三が日、台所仕事から解放されるようにともいわれています。

祝箸

箸袋に「寿」などと縁起のいい文字が記された箸。箸の両方が細くなっており、一方を年神さまが、一方を人間が食すのに使い、年神さまと人間が一緒に食事するというものです。神聖な木とされる柳で作られ、三が日の間は箸袋の名前を書いて、同じ箸を使うようにします。

お雑煮

年神さまの魂の宿った餅を食べることで、エネルギーが注ぎ込まれるというのが本来のお雑煮の趣旨です。

餅を中心に、肉や野菜、魚を入れますが、地域によって、各家庭によっても、さまざまなバリエーションがあります。

焼き餅を入れたり、生餅を入れたり、関東は赤味噌が多く、関西は白味噌が多く、醤油で味付けする地域もあり、白餅ではなく餡餅を入れるところもあり、餅の形も関東は角餅、関西は丸餅が多いという具合です。

福茶

お湯に梅干し、塩昆布、豆、山椒などを入れたもの。平安時代、空也上人がお茶に梅干しを入れてふるまい、多くの人の病を治したのが始まりとされます。

お年玉

新年に年長者が子供や目下の者に金銭を贈ること。「玉」は本来「魂」であり、年神さまに捧げた供え物を下されるものでした。

いったん神に捧げた霊力(魂)を下されることによって、下された人間に神の力が注ぎ込まれるという発想です。

古くは餅を贈ったともいいます。

七福神詣

七福神をまつった神社を一社ずつ七社めぐると商売繁盛、家内安全などにご利益があるとされます。

七福神は日本、中国、インドの神様を集めたもので室町時代末期から民間信仰として定着しました。

ふつうは夷・大黒天・毘沙門天・弁財天・福禄寿・寿老人・布袋を当てます。

夷(恵比寿)は釣り竿と鯛を持つ、商売繁盛と豊作の神。大国主神の息子ヤエコトシロヌシノカミと同一視されています。エビスビールの絵柄でおなじみですね。

大黒天は打ち出の小槌を持つ商売繁盛、五穀豊穣の神。インド由来の神ですが、大国主神と同一視されます。

毘沙門天は鎧兜をまとい、鉾をもった戦の神。武芸上達や勝負事にご利益があります。

弁財天は琵琶を手にした学問・芸能の神。

福禄寿は長い頭が特徴の、健康、長寿の神。南極星の化身で中国の道士。

寿老人は人の寿命の書かれた巻物を持つ、無病息災、不老長寿の神。老人星の化身とも、老子その人であるとも。

布袋は大きな袋をかつぐ中国の禅僧とも、弥勒菩薩の化身ともいわれ、家庭円満にご利益があります。

これら七福神が乗る船が宝船で、江戸時代の庶民は初夢に宝船をみると縁起がいいということで、2日の夜、宝船の絵を枕の下にしいて寝ました。

次の行事「小寒
年中行事 解説 音声つき 現代語訳つき朗読

朗読・解説:左大臣光永

■【古典・歴史】メールマガジン
■【古典・歴史】YOUTUBEチャンネル


-->