酉の市

酉の市春をまつことのはじめや酉の市 榎本其角

11月の酉の日に、各地の大鳥(鷲、鳳)神社で行われる市のこと。お酉さまとも。熊手売りの威勢のいい掛け声は晩秋の風物詩です。

酉の市は2回もしくは3回あり、一の酉、二の酉、三の酉といいます。三の酉まである年は火事が多いとされます。酉の市が行われるのは東日本のみで、西日本では1月10日の十日夷の祭りが相当します。

樋口一葉の『たけくらべ』に、江戸下谷(台東区千束)の鷲神社の酉の市の様子が、子供たちの目を通して生き生きと描かれています。

この年三の酉までありて中一日はつぶれしかど前後の上天気に大鳥神社の賑ひすさまじく…(中略)…天柱(てんちゅう)くだけ、地維(ちい)ちいかくるかと思はるゝ笑ひ声のどよめき、…(中略)…さっさ押せ押せと猪牙(ちょき)がかった言葉に人波を分くる群もあり、河岸の小店の百囀(ももさえ)ずりより、優にうづ高き大籬(おおまがき)の楼上まで、絃歌(げんか)の声のさまざまに沸き来るような面白さは大方の人おもい出でて忘れぬ物に思(おぼ)すも有るべし。

樋口一葉「たけくらべ」

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年中行事 解説 音声つき 現代語訳つき朗読

朗読・解説:左大臣光永

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