【桐壺 03】若宮三歳、御袴着の儀

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原文

この皇子三つになりたまふ年、御袴着のこと、一の宮の奉りしに劣らず、内蔵寮納殿の物を尽くして、いみじうせさせたまふ。それにつけても、世のそしりのみ多かれど、この息子のおよすけもておはする御容貌心ばへ、ありがたくめづらしきまで見えたまふを、えそねみあへたまはず。ものの心知りたまふ人は、かかる人も世に出でおはするものなりけりと、あさましきまで目を驚かしたまふ。

現代語訳

この皇子が三歳になられる年、御袴着の儀式を、一の宮がご使用になったのに劣らず、内蔵寮(くらづかさ)、納殿(おさめどの)の物を尽くして、たいそう立派に行われる。

それにつけても、世のそしりばかりが多いが、この皇子の成長するにつれて整っていくご容貌、ご気性は、めったになく、めずらしきまでにご覧になると、最後まで憎み通すことがおできにならない。

ものの心をお知りになる人は、このような人も世にお生まれになるものなのだなあと、びっくりするまでに目を驚かされる。

語句

■御袴着 生まれた子にはじめて袴をはかせる儀式。着袴(ちゃっこ)とも。古くは三歳、後には五・六歳で行った。 ■内蔵寮 くらづかさ。中務に同じ。宝物・献上品などを管理した役所。 ■納殿 おさめどの。宮中の御物をおさめる倉庫。宜陽殿(ぎようでん)にあった。 ■およすけもておはする 「およすく」は成長する。「もて」は「もちて」の略。「おはする」は「ゆく」の敬語。成長するにつれて整っていく。 ■心ばえ ご気性。 ■あへたまわず ~し通すことがおできにならない。「あへ」は「敢ふ」の連用形。 ■あさましきまで 「あさむ」は意外なことにびっくりする。 

朗読・解説:左大臣光永

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