『源氏物語』の現代語訳つくってます~明石入道の入山ほか

こんにちは。左大臣光永です。まだまだ寒い日がつづきますが、いかがお過ごしでしょうか?

私は連日、『源氏物語』の現代語訳をつくっています。第三十四帖「若菜上」の途中まで訳しました。今日はその話です。

↓↓↓音声が再生されます↓↓

『源氏物語』については9回目の配信となります。以前の配信はこちらのリンク先をご覧ください。
https://roudokus.com/Genji/index.html#r

■明石入道の入山
■明石入道と平経正<
■明石の君と末摘花<
■明石の君、明石の女御に訓戒
■光源氏のバランス感覚
■源氏、明石の女御に訓戒
■なぜ読みにくいのか?
■柏木、女三の宮を恋慕
■春の六条院 蹴鞠の遊び
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といった内容で語っています。ぜひ聞きにいらしてください。

明石入道の入山

源氏物語の現代語訳を作っています。第三十四帖「若菜上」の途中まで訳しました。

明石の君の父・明石の入道が山籠りをして、その知らせが都に届くところです。

ここまでの経緯は、明石の君の娘の明石の女御が、春宮(皇太子)にとついで、若宮が生まれました。この時明石の女御は13歳です。

明石の入道は、この人はかなり偏屈な変人として描かれていますが、娘の明石の君が光源氏と結ばれて上京した後も、明石で弟子たちと共に暮らしていました。それが「若宮が生まれた」という知らせを受けて、「今や現世に思い残すことはない」と、山に籠もります。

「入道が山にこもった」という知らせが都に届いて、娘の明石の君も、妻である尼君も、悲しみに暮れているという場面です。

「山にこもる」というのが、現代の感覚では ピンと来ないですが、生きながら死別するようなもんでしょうか。いわゆる即身仏に近いことです。

むしろ死別であれば、遺体と対面することもできるし、葬式もできる。供養することもできる。よほど慰めがあるでしょう。

しかしお山にこもるということは、いつ命が果てるかしれない、狼にも熊に食われてしまえと入道本人は言いますが、父の最期を看取ることもできず、残された明石の君は、いたたまれないものはあろうと思いました……

↓↓↓音声が再生されます↓↓

ゆゑある庭の木立のいたく霞《かす》みこめたるに、色々紐《ひも》ときわたる花の木ども、わづかなる萌木《もえぎ》の蔭に、かくはかなき事なれど、よきあしきけぢめあるをいどみつつ、我も劣らじと思ひ顔なる中に、衛門督のかりそめに立ちまじりたまへる足もとに並ぶ人なかりけり。容貌《かたち》いときよげになまめきたるさましたる人の、用意いたくして、さすがに乱りがはしき、をかしく見ゆ。

御階《みはし》の間《ま》に当れる桜の蔭によりて、人々、花の上も忘れて心に入れたるを、大殿《おとど》も宮も隅《すみ》の高欄《かうら》に出でて御覧ず。

いと労《らう》ある心ばへども見えて、数多くなりゆくに、上臈《じやうらふ》も乱れて、冠《かうぶり》の額《ひたひ》すこしくつろぎたり。大将の君も、御位のほど思ふこそ例ならぬ乱りがはしさかなとおぼゆれ、見る目は人よりけに若くをかしげにて、桜の直衣《なほし》のやや萎《な》えたるに、指貫《さしぬき》の裾《すそ》つ方すこしふくみて、けしきばかり引き上げたまへり。軽々《かろがろ》しうも見えず、ものきよげなるうちとけ姿に、花の雪のやうに降りかかれば、うち見上げて、しをれたる枝すこし押し折りて、御階《みはし》の中の階《しな》のほどにゐたまひぬ。督《かむ》の君つづきて、「花乱りがはしく散るめりや。桜は避《よ》きてこそ」などのたまひつつ、宮の御前の方を後目《しりめ》に見れば、……

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朗読・解説:左大臣光永