四編下 池鯉鮒より鳴海へ
原文
馬士のうた「みやで泊(とま)ろお亀にしやうかナアただしや岡崎よい女郎しゆ。ナアドウドウ
弥次「いめへましい。わらぢであしをいためた。ちつとの間ぞうりで行ふ。モシモシ、此わらぞうりはいくらだね
ていしゆ「アイアイ十六文でおます
弥次「こいつはやすい
ここのていしゆいせものにて、あきなひはこうしや也
ていしゆ「アイおやすうおますわいな。わたしとこのぞうりはひゆつと丈夫(じやうぶ)で、ねからきりやいたしませぬ
北八「ねからアきれめへが、さきのほうからきれるだろふ
ていしゆ「イヤおはきなされてはたまらまいが、しまつておきなさると、いつまでもおますわいな
弥次「そふだろう、そしておめへとこのぞうりは、はながあつててうほうだ
北八「はなをのねへぞうりが、どこにあるもんだ
弥次「何にしろ、やすいものだ
トつるしてあるぞうりを引きりとつて
イヤこのぞうりはちんばだわへ。かたかたは大きくて、こつちらはちいさいよふだ。コリヤア八文ヅツにしちやア、大きなほうは安いが、ちいさいほうはたかいものだ。ナント御ていしゆ、かたつぽの大きなほうを、九文に買ひやせうから、こちらを七文にまけてくんなせへ
ていしゆ「アイよふおます。おめしなされ
弥次「なむさん銭がたりない。一ツそく買(かを)ふとおもつたが、たつた七文ほつきやアねへから、アノこつちらかたかたのほうばかり買(かひ)やせう
北八「ハハハハこいつは大わらひだ。おいらがまねをしよふとおもつても、餅(もち)ならいいが、ぞうりかたかたが何になるもんだ
ていしゆ「おさよふでおます。一ツそくおめしなさりませ。どふもかたかたはなしては、あげられませんわいな
弥次「ナニかたつぽ(片方)はうらねへか。さすがは田舎(いなか)だけ、ものが不自由(じゆう)だ
北八「エエ江戸だとつてナニぞうりをかたかた、売(うる)ものがあるもんだ
ていしゆ「なんならこれになさりませ。これじやと、いつそくで七文にしてあげませうわいな
現代語訳
池鯉鮒より鳴海へ
馬士の唄「みやで泊まろうお亀にしようかなあ但しや岡崎いい女郎衆。なあどうどう」
弥次「いまいましい。草鞋で足を痛めた。少しの間草履で行こう。もしもし、この藁草履はいくらだね」
亭主「はいはい、十六文でおます」
弥次「こいつは安い」
ここの亭主は伊勢者で商い上手である。
亭主「はい、お安うおますわいな。私とこの草履は丈夫さでは一段上で一向に切れはいたしませぬ」
北八「根からは切れねえが、先の方から切れるだろう」
亭主「いや、お履き古されるとたまりませぬが、大事にしまっておきなさると、いつまでもおますわいな」
弥次「そうだろう。そしておめえとこの草履は、鼻緒があって重宝だ」
北八「鼻緒のねえ草履がどこにあるもんか」
弥次「何しろ安いもんだ」
と吊るしてある草履を引っ張って、取って見る。
「いや、この草履はちんばだわえ。片方は大きくて、こっちの方は小さいようだ。こりゃあ八文づつにしちゃあ、大きい方は安いが、小さい方は高いものだ。なんと、御亭主、片方の大きな方を九文で買いやしょうから、こちらを七文にまけてくんなせえ」
亭主「はい、ようおます。お召しなされ」
弥次「しまった。銭が足りない。一足買おうと思ったが、たった七文しかねえから、あの、こっちの片方のほうばかりを買いましょう」
北八「はははは、こいつは大笑いだ。おいらの真似をしようと思っても、餅ならいいが、草履片方が何になるもんだ」
亭主「お左様でおます。一足お召しなされませ。どうも片方を離しては、あげられませんわいな」
弥次「なに、片方では売らねえか。さすがは田舎だけに、ちょっとの買い物でも不自由なもんだ」
北八「ええ、江戸だとってなに、草履をかたかたで売ることがあるもんか」
亭主「なんならこれになさりませ。これじゃと、一足で七文にしてあげましょうわいな」
語句
■みや-熱田の宿駅の異称。■お亀-熱田の神戸・伝馬・築出一帯の遊女の総称。享和年間からの称で、語源に諸説がある。■あしをいためた-新しい草履を履くと、すれて足に痛みや出血を生ずること。■十六文でおます-天明六年(1786)刊の『道中記』では、草履は八文から十二文の間さまざま。草履十六文は、文化年間では、そのくらいであろう。■いせもの-伊勢者。江戸では伊勢出身の商人で、産を成した者が多く、商い上手と言われた。■こうしや-巧者。たくみ。■ひゆつと丈夫で-一段強くて。■ねからきりやいたしませぬ-一向に切れはしません。■ねから-「根から」と木の見立てで洒落て、先の方からといったもの。■引きりとつて-引っ張って。切り取って。■かたかた-片っ方。■なむさん-「南無三宝」の略。失敗した時などに発する誓い言葉。北八が餅で試みたのを、弥次が草履でやって失敗する面白味。■ほつきや-「ほかは」の訛。
原文
弥次「エエ馬のくつがはかれるものか。人じらしな
北八「いつそくかいな。おめへかたつぽ買つて、どふするつもりだ
弥次「またさきへいつてかたつぽ買をふ
ていしゆ「ハハハハハハ十四文にいたしませう。一ツそくおめしなされ
弥次「きさま、とつくにそふいへばいい
トやうやうの事にて、ぞうりをととのへ、わらじをぬぎすてて、はきかへゆく
かくて此宿を打過、はやくも八町なはて、さなけ明神をふしおがみ、今岡村のたてばにいたる。此ところは、いもかはと言、めんるいの名物、いたつて風味(ふうみ)よしとききて
名物のしるしなりけり往来(わうらい)の客(きやく)もつぐないも川の蕎麦(そば)
それよりあなふ村、落合むらを、すぎゆきて、有松(ありまつ)にいたり見れば、名にしおふ絞(しぼり)の名物、いろいろの染地(そめぢ)家ごとにつるし、かざりたててあきなふ。両がはの見せより、旅人(りよじん)を見かけて
「おはいりおはいり。あなたおはいり。名物有松しぼりおめしなされ。サアサアこれへこれへ。おはいりおはいり
弥次「エエやかましいやつらだ
ほしいもの有まつ染(ぞめ)よ人の身のあぶらしぼりし金(かね)にかへても
北八「ナント弥次さん、ゆかたでもかはねへか
弥次「おもいれ見たをして、やろうじやアねへか
北八「よかろふ。たんと買(か)うつらをして、なぐさんでやろう
現代語訳
弥次「ええい、馬の沓が履かれるものか。人をからかいなさんな」
北八「一足買いな。おめえ片方(かたっぽ)買って、どうするつもりだ」
弥次「また先へ行ってからもう片っぽを買おう」
亭主「はははははは、十四文にいたしましょう。一足お召なされ」
弥次「きさま、最初にそう言えばいいに」
とようようの事で、草履を準備し、草鞋を脱ぎ捨てて、履き替え、道を行く。
このようにして、この宿を過ぎ、早くも八町なわて、さなけ明神を拝みながら今岡村の建場に着く。いもかわという平打ちうどんが名物で、いたって風味がいいというので
名物のしるしなりけり往来(わうらい)の客(きやく)もつぐないも川の蕎麦(そば)
それから阿野村、落合村を通り過ぎ、有松に着いて見ると有名な絞の名物を商っており、いろいろな染地を家ごとに吊るして、飾り立てている。両側の店から、旅人を見かけて
「お入り、お入り。あなたお入り。名物の有松絞をお召しなされ。さあさあこれへこれえ。お入りお入り」
弥次「ええぃ、やかましい奴等だ」
ほしいもの有まつ染(ぞめ)よ人の身のあぶらしぼりし金(かね)にかへても
北八「なんと弥次さん、浴衣(ゆかた)でも買わねえか」
弥次「思う存分冷やかしてやろうじゃねえか」
北八「よかろう。たんと買い物をする面をして、冷やかしてやろうぜ」
語句
■馬のくつ-馬の足の痛まぬようにする革製の沓のようなもの。■人じらしな-人をいらいらさせるな。人をからかうのも程々にせよの意。■八町なはて-『諸国道中記』に「八町なわて、右にさなけ明神社有り」。■今岡村-『諸国道中記』に「今岡村、茶や有り。いも川と云ふめんるい有り、道中一なり」。三河国碧海郡で、池鯉鮒より十八丁の所。■いもかは-平うちの饂飩(うどん)の一種。今岡の西方、芋川の地名によるという。■名物の~-一九は饂飩を蕎麦と思っていたらしい。よって山芋を蕎麦の「つなぎ」にするので「つなぐ芋」と修辞したか。あるいは「いも川」一名「ひもかは」を知って、紐とかけたのか。一首は、いも川の蕎麦はなるほど名物だ。往来の客をつなぎとめているの意。■あなふ村-阿野村(愛知県豊明市阿野町)。『東海道宿村大概帳』に「尾張国知多郡東阿野村」。池鯉鮒から一里の所。『諸国道中記』に「あなふ村、此所六月朔日より新米出る」。■落合むら-『大概帳』に「尾張国知多郡落合村」(豊明市内)。池鯉鮒より一里十丁。■有松-『大概帳』に「尾張国知多郡有松村」(名古屋市緑区有松町)。次の宿、鳴海へ十八丁。「有松村にて絞染めの渡世いたし、所々へ売出す。是を有松絞と名付け、此所の名物なり」。『諸国道中記』に「有まつ、茶や有り、木綿のふろしきゆかたを染てうる」。■染地-絞りを出した生地の色合い。■ほしいもの有まつ染~-ほしいのは有松染だ、油汗をかいて働いて得た金にかえてもの意。「有松染」に「しぼり」をかけた趣向。■見たをして-売物を、安く評価して。
原文
トあちこちを見まはすうち、此町のとつぱづれに、小みせなれども、そめ地いろいろ、おもてにつるしてある内へはいりて
弥次「コレ此しぼりは、いくらします
トいふに、此うちのていしゆと見へて、しやうぎをさしていたるが、よねんなく、うてうてんとなりて
ていしゆ「サアしまつた。時にお手はなんじやいな
弥次「コレサこりやアいくらだといふに
トすこし、こはだかにいふとていしゆきもをつぶして
「ハイハイそれかな
弥次「いくらいくら
ていしゆ「コウト、あなたいくらだとおつしやる。そこでかやうにいたそかい
弥次「エエ小じれつてへ。コレうらねへのか。ねだんはいくらだといふに
ていしゆ「ハテさてやかましい人じや。そちらのほうへ、ひつかへして、符帳(ふてう)を見せなされ。ただしれるものじやないわいの
弥次「こいつはとんだあきんどだ。ふてうに、ウのじとエのじがかいてある
ていしゆ「ヲヲそふじやあろ。コウト三分五りんぎれじや
弥次「たかいたかい。まけなせへ
ていしゆ「ナニまけいイヤならまい。此下手将棋(へぼしゃうぎ)に
しやうぎのあい手「次兵さん、マアあきなひをしよまいか。あなたがたがまつてござらつせる
ていしゆ「よいわいのとても敵等(てきら)は、よふ買(か)やしよまい。ハテかいたふても金銀はあらまい。ないはづじや。わしが手におはしますじやて
弥次「なんだべらぼうめ、金銀があるまい。人を見くびつたことをいやアがる。あるから買(か)ほふ。これはふんどしだけでいくらだへ
ていしゆ「なんじやふんどし買をふ。イヤぶしつけせんばんな
弥次「こいつおいらをてう(嘲)しやアがる売(うり)ものかいものに不躾(ぶしつけ)も何もいるものか。はなつたらしめが
ト大きなこへする ていしゆはつと心づき そうそうしやうぎをやめて
「ヘイヘイ是は麁相(そそう)申ました。何なとまけてあげませずに、おめし下されませ
現代語訳
とあちこちを見回すうち、この町の一番外れに、小さな店ではあるが、各種染地を表に吊るしてある家に入って
弥次「これ、この絞は、いくらします」
と言うと、この家の亭主と見えて、将棋を指していた者が、勝負に夢中になっており
亭主「さあ、しまった。時にお手持ちの駒は何じゃいな」
弥次「これさ、こりゃあいくらだと言うに」
と、少し声高に言うと、亭主は驚いて
「はいはい、それかな」
弥次「いくらいくら」
亭主「これ、貴方はいくらだとおっしゃる。そこでこのようにいたそうかい」
弥次「ええぃじれってえ。これは売らねえのか。値段はいくらだと言うに」
亭主「はてさて、やかましいお人じゃ。そっちの方へ引返して符帳を取って来てわしに見せなされ。簡単にわかるもんじゃないわい」
弥次「こいつはとんだ商人だ。符帳にウの字とエの字が書いてある」
亭主「おう、そうじゃあろ。こうっと三分五厘切れじゃ」
弥次「高い高い。負けなせえ」
亭主「なに、負けちゃなるまい。この下手(へぼ)将棋に」
将棋の相手「次兵さん、まあ商いをしてしまいなさい。あの方たちが待ってござる」
亭主「ほっとけ、ほっとけ。まさか敵等は買やあすまい。買とうても金銀はあるまい。無いはずじゃ。わしの手の内にありますじゃて」
弥次「なんだべらぼうめ、金銀があるまいと。人を見くびった事を言やあがる。あるから買おう。これは褌だけの長さでいくらだえ」
亭主「何じゃ褌を買おう。いや、不躾(ぶしつけ)千万な」
弥次「こいつ、おいらを馬鹿にしやあがる。売物、買物に不躾も何もあるもんか。鼻垂らし(はなったらし)めが」
と大きな声を出す。亭主ははっと気付いて早々に将棋を止めて
「へいへい、これはそそうを申しました。何なりと負けてあげますに、お召しくださりませ」
語句
■とつぱづれ-一番はずれ。■お手はなんじやいな-将棋の時、相手の手にある持駒を尋ねる言葉。■あなたいくらだと-上は客に応対、下は将棋の相手にいう言葉。以下亭主の言葉はその気味になっている。■符帳-ここは売物に、商業や商店によって、特別な記号で、おの代価をしるしたもの。■ただしれるものじやないわ-見ただけでは、代はわからぬ。お客と内の者に言う言葉を混じている。■ウの字とエの字-次によると、「ウ」が三、「エ」が五となるが、何によるか未詳。三分五りん-一尺について三分五厘。ここは銀貨幣を数える単位で、分は匁の十分の一。厘は分の十分の一。■まけいイヤならまい-価を安くする意と、勝負に負ける意をかねる。■敵等-ここは第三人称の代名詞。■金銀はあらまい-物を買う金銭の意と、将棋の駒の金と銀が混じていて、その駒なら自分の持駒になっているの意。■ふんどしだけで~-褌の長さだけに切っていくらかと問う。有松絞の褌も可笑しいが、将棋で、桂馬の駒を、相手の二つの駒のどれかが取れるように打つ手を「ふんどしをかける」という意に、亭主は解することで、下に続く。■ぶしつけせんばんな-ふんどしをかけるとは、けしからぬ、失礼なと怒っている。■てうしやアがる-嘲笑する。ばかにする。江戸の花街から出て、一般語となったものの一。■はなつたらしめが-年少者などを罵る言葉。■あげませずに-あげましょう。この亭主には、名古屋方言を使用させてあるが、例によって皆が皆、より所をもってしようしたものではない。
原文
北八「そふいいなさりやア、しこたま買(か)つて上ゲやすは、弥次さん、おめへおふくろやかみさまへのみやげにはあれがよかろふ。いくらだの
ていしゆ「ヘイ十四匁八分でおます
弥次「ソレそつちたのは
ていしゆ「これは十五匁
弥次「もつといいのはねへか
ていしゆ「ありますとも。ヘイこれがなア廿一匁ヅツ、こちらが廿二匁、下のがナ十九匁ヅツでおざります
弥次「もつとこれよりいいのがほしい
ていしゆ「イヤもふみな、かやうなものでおざります
弥次「ムムそんならでへじ(大事)にしまつておきな。誰(だれ)ぞがかいやしやう。わつちやアいつち初手(しよて)に見ておいた、此三分ぎれを、手ぬぐひだけ、きつてくんなせへ
ていしゆ「ヘイさやうかな
トきもをつぶし二しやく五寸きつて出す。弥次郎此代をはらひて、ここを立出
「とんだやつらだ。すでにいい三太郎しよふとしやアがつた。きもつぶしな、ハハハハハハ。時にでへぶ(大分)道くさをした。ちと急いでやりかけよふ
トこれよりすこしみちをはやめ行ほどに、はやくもなるみのしゆくにつきければ
旅人のいそげば汗に鳴海がたここもしぼりの名物なれば
かくよみ興じて田ばた橋をうちわたり、かさでら観音堂にいたる。笠をいただきたもふ木像なるゆへ、この名ありとかや
執着のなみだの雨に濡れじとかさをめしたるくはんをんの像(ぞう)
それよりとべ村、山ざき橋、千人塚をうちすぎ、やうやく宮の宿にいたりし頃は、はや日ぐれ前にて、棒鼻より家毎に、客をとどむる出女の声姦(かしまし)し。
現代語訳
北八「そう言いなさんな、しこたま買ってあげやすわ。弥次さん、お前(めえ)、お袋やかみさんへの土産にはあれがよかろう。いくらだの」
亭主「へい、十四匁八分でおます」
弥次「それ、そっちのはいくらだ」
亭主「これは十五文でおます」
弥次「もっといいいにはねえか」
亭主「ありますとも。へいこれがなあさ二十一匁づつ、こちらが二十二匁、下のがな十九匁づつでおざります」
弥次「もっとこれより良いのが欲しい」
亭主「いや、もう皆こんなものでおざります」
弥次「むむっ、そんなら大事(でえじ)にしまっておきな。誰ぞが買やしょう。わっちやあ一番初めに見つけておいたこの三分ぎれを手拭の長さだけ、切ってくんなせえ」
亭主「へい、左様ですか」
と訳のわからぬ心持で、二尺五寸切って出す。弥二郎はこれの代金を払って、ここを出立。
「とんだ奴らだ。すんでのことで阿保の三太郎にしようとしやがった。おどろかすじゃねえか。はははははは。時に大分道草をした。ちっと急いで行きやしょう」
と、ここから少し速めの道行をすると、早くも鳴海の宿に着く。
語句
■しこたま-どっさり。『俚言集覧』に「多き事、シコテコとも云ふ」。■初手に-初めに。実は「三分五厘」ぎれのはず。■手ぬぐひだけ-手拭の長さだけ。下に見える二尺五寸である。■三太郎-愚鈍な者をいう擬人名。■きもつぶしな-驚かすにも程があるの意。『幽遠隋筆』に「物に驚くを、きもをつぶすといふ」。■道くさ-途中で時間を無駄にして、遅れるをいう。■なるみのしゆく-池鯉鮒より二里半十二丁の宿駅。尾張国愛知郡鳴海(名古屋市緑区内)。
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