第百段 久我相国は
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久我相国(こがのしょうこく)は、殿上にて水を召しけるに、主殿司(とのもづかさ)、土器(かわらけ)を奉りければ、「まがりを参らせよ」とて、まがりしてぞ召しける。
口語訳
久我太政大臣は、清涼殿の殿上の間で水を召しあがる時に、主殿司(殿上の雑事を行う女官)が素焼きの器を持ってきた所、「まがりを持って参れ」といって、まがりで水を召しあがった。
語句
■久我相国 太政大臣源通光。前段の基具の大叔父。寛元4年(1246)太政大臣。宝治2年(1248)没。62歳。 ■殿上 清涼殿の殿上の間。 ■主殿司 殿上の雑事を行う女官。 ■土器 素焼きの器。 ■まがり 未詳。諸説あり。
メモ
●宮中の故実に忠実であることを兼好は好んだ。しかし「まがり」がよくわからない。
●こまごました規則があったらしいが、現代人にはよくわからない。
●前段に続き兼好が仕えた堀川家についての話だが、こちらは肯定的な話。
朗読・解説:左大臣光永