第二百十二段 秋の月は、かぎりなくめでたきものなり
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秋の月は、かぎりなくめでたきものなり。いつとても月はかくこそあれとて、思ひ分かざらん人は、無下に心憂かるべき事なり。
口語訳
秋の月は、限りなく素晴らしいものである。いつでも月はこのようなものだろうと、他の季節の月と区別がつかない人は、まったく残念な事である。
語句
■無下に ひどく。まったく。
メモ
■大方は月をも愛でじ(伊勢物語 八十八段)
■秋風にたなびく雲のたえ間より 漏れ出づる月の影のさやけさ(左京大夫顕輔)
■思ひおくことぞこの世に残りける見ざらんあとの秋の夜の月(『兼好法師家集』)
朗読・解説:左大臣光永