【賢木 16】源氏、藤壺の寝所に上がりこむ
かやうの事につけても、もて離れつれなき人の御心を、かつはめでたしと思ひきこえたまふものから、わが心の引く方にては、なほつらう心うしとおぼえたまふをり多かり。
内裏《うち》に参りたまはんことは、うひうひしくところせく思しなりて、春宮《とうぐう》を見たてまつりたまはぬをおぼつかなく思《おも》ほえたまふ。また頼もしき人もものしたまはねば、ただこの大将の君をぞ、よろづに頼みきこえたまへるに、なほこのにくき御心のやまぬに、ともすれば御胸をつぶしたまひつつ、いささかもけしきを御覧じ知らずなりにしを思ふだに、いと恐ろしきに、今さらにまたさる事の聞こえありて、わが身はさるものにて、春宮の御ために必ずよからぬこと出で来《き》なんと思すに、いと恐ろしければ、御祈禱《いのり》をさヘせさせて、このこと思ひやませたてまつらむと、思しいたらぬ事なくのがれたまふを、いかなるをりにかありけん、あさましうて近づき参りたまへり。心深くたばかりたまひけんことを、知る人なかりければ、夢のやうにぞありける。
まねぶべきやうなく聞こえつづけたまへど、宮いとこよなくもて離れきこえたまひて、はてはては御胸をいたう悩みたまへば、近うさぶらひつる命婦《みやうぶ》、弁などぞ、あさましう見たてまつりあつかふ。男は、うしつらしと思ひきこえたまふこと限りなきに、来《き》し方行く先かきくらす心地して、うつし心失せにければ、明けはてにけれど、出でたまはずなりぬ。
御悩みにおどろきて、人々近う参りてしげうまがへば、我にもあらで、塗籠《ぬりごめ》に押し入れられておはす。御衣《ぞ》ども隠し持たる人の心地ども、いとむつかし。宮はものをいとわびしと思しけるに、御気あがりて、なほ悩ましうせさせたまふ。兵部卿宮《ひやうぶきやうのみや》、大夫《だいぶ》など参りて「僧召せ」など騒ぐを、大将いとわびしう聞きおはす。からうじて、暮れゆくほどにぞおこたりたまへる。
かく籠《こも》りゐたまへらむとは思しもかけず、人々も、また御心まどはさじとて、かくなんとも申さぬなるべし。昼の御座《おまし》にゐざり出でておはします。よろしう思さるるなめりとて、宮もまかでたまひなどして、御前人少なになりぬ。例もけ近く馴らさせたまふ人少なければ、ここかしこの物の背後《うしろ》などにぞさぶらふ。命婦の君などは、「いかにたばかりて出だしたてまつらむ。今宵さへ御気あがらせたまはん、いとほしう」など、うちささめきあつかふ。
君は、塗籠《ぬりごめ》の戸の細目《ほそめ》に開《あ》きたるを、やをら押し開けて、御屏風《みびやうぶ》のはさまに伝ひ入りたまひぬ。めづらしくうれしきにも、涙落ちて見たてまつりたまふ。「なほ、いと苦しうこそあれ。世や尽きぬらむ」とて、外《と》の方を見出だしたまへるかたはら目、言ひ知らずなまめかしう見ゆ。御くだものをだにとて、まゐりすゑたり。箱の蓋などにも、なつかしきさまにてあれど、見入れたまはず。世の中をいたう思しなやめる気色《けしき》にて、のどかにながめ入りたまへる、いみじうらうたげなり。髪《かむ》ざし、頭《かしら》つき、御髪《みぐし》のかかりたるさま、限りなきにほはしさなど、ただかの対の姫君に逢ふところなし。年ごろすこし思ひ忘れたまへりつるを、あさましきまでおぼえたまへるかな、と見たまふままに、すこしもの思ひのはるけどころある心地したまふ。
けだかう恥づかしげなるさまなども、さらにこと人とも思ひ分きがたきを、なほ、限りなく思ひしめきこえてし心の思ひなしにや、さまことにいみじうねびまさりたまひにけるかなと、たぐひなくおぼえたまふに、心まどひして、やをら御帳の内にかかづらひ入《い》りて、御衣《ぞ》の褄《つま》を引きならしたまふ。けはひしるく、さと匂ひたるに、あさましうむくつけう思されて、やがてひれ臥したまへり。「見だに向きたまヘかし」と、心やましうつらうて、引き寄せたまへるに、御衣をすべしおきて、ゐざり退《の》きたまふに、心にもあらず、御髪《みぐし》の取り添へられたりければ、いと心うく、宿世《すくせ》のほど思し知られて、いみじと思したり。
男も、ここら世をもてしづめたまふ御心みな乱れて、うつしざまにもあらず、よろづのことを泣く泣く恨みきこえたまヘど、まことに心づきなしと思して、いらへも聞こえたまはず。ただ、「心地のいと悩ましきを。かからぬをりもあらば聞こえてむ」とのたまへど、尽きせぬ御心のほどを言ひつづけたまふ。さすがにいみじと聞きたまふ節もまじるらん。あらざりしことにはあらねど、あらためていと口惜しう思さるれば、なつかしきものから、いとようのたまひのがれて、今宵も明けゆく。せめて従ひきこえざらむもかたじけなく、心恥づかしき御けはひなれば、「ただかばかりにても、時時いみじき愁へをだにはるけはべりぬべくは、何のおほけなき心もはべらじ」など、たゆめきこえたまふべし。なのめなることだに、かやうなる仲らひはあはれなることも添ふなるを、ましてたぐひなげなり。明けはつれば、二人していみじきことどもを聞こえ、宮は、なかば亡きやうなる御気色《けしき》の心苦しければ、「世の中にありと聞こしめされむもいと恥づかしければ、やがて亡せはべりなんも、またこの世ならぬ罪となりはべりぬべきこと」など聞こえたまふも、むくつけきまで思し入れり。
「逢ふことのかたきを今日にかぎらずはいまいく世をか嘆きつつ経ん。
御ほだしにもこそ」と聞こえたまへば、さすがにうち嘆きたまひて、
ながき世のうらみを人に残してもかつは心をあだと知らなむ
はかなく言ひなさせたまへるさまの、言ふよしなき心地すれど、人の思さむところもわが御ためも苦しければ、我にもあらで出でたまひぬ。
現代語訳
源氏の君は、こうしたことにつけても、ご自分を遠ざけ冷淡になさっている方(藤壺中宮)の御心を、一方ではさすがと思い申し上げるのだが、ご自分の心にまかせる方向においては、やはりつらく残念だとお思いになる折も多いのだ。
藤壺中宮は、参内なさることが、御気持ちが落ち着かず、窮屈に思われて、東宮を拝見しないことを気がかりにお思いになる。
源氏の君のほかには頼みにする人もいらっしゃらないので、ただこの大将の君(源氏の君)を、万事頼りにし申し上げていらっしゃるのだが、やはりこのうとましい御心がやまないので、ともすれば困惑なさるようなことが度々あり、故桐壺院がすこしもその気配をお察しあそばされずじまいでいらしたことを思うことさえ、ひどく恐ろしいのに、ましていまさら、またそうした事が噂になって、わが身のことはともかく、東宮の御ために必ずよくないことが出来するだろうと思われるにつけても、ひどく恐ろしいので、御祈祷までさせて、源氏の君のお気持ちを思いとどまらせ申し上げようと、あらゆる方面にご思案をめぐらして源氏の君と逢うことを避けていらしたのに、いかなり折であったろうか、思いもかけないことに、源氏の君は藤壺中宮におそば近くにおいでになった。心深くにご計画されていたことを、気づく人もなかったので、まったく夢のような出来事であったのだ。
源氏の君は、言葉で言い尽くせないほど、さまざまにお気持ちを訴えられたが、藤壺中宮はまったくお取り上げにならず、ついには御胸をひどく痛めてお苦しみになられるので、中宮の近くにお仕えしている命婦、弁といった女房たちが、驚き呆れて拝見して、ご介抱申し上げる。
男は、そうした藤壺中宮の自分への態度を情けなくつらいと、どこまでも思い申し上げるが、前後も真っ暗になった気持ちがして、分別もなくなってしまったので、夜はすっかり明けてしまったが、ご退出にならずにいた。
藤壺中宮がご病気になられたことに驚いて、人々がおそば近く参って足繁く出入りするので、源氏の君は我にもあらぬ御気持ちで、塗籠に押入れられていらした。
源氏の君の御衣どもを隠し持っている女房たちの気持ちも、ひどく落ち着かない。
藤壺中宮は、万事ひどくわびしいと思ってらしたところ、上気なさって、いっそうお苦しみになられる。
兵部卿宮、大夫などが参って「僧を召せ」など騒ぐのを、大将(源氏の君)はひどく心細くお聞きになっていた。
かろうじて、日暮れ方に、藤壺中宮は回復された。
このように源氏の君が塗籠にこもつていらっしゃるとは藤壺中宮は思いかけもなさらず、女房たちもまた、中宮の御心をまどわしてはいけないと、こうこうでございますとも、申し上げなかったのだろう。
藤壺中宮は、昼の御座にいざり出ておいでになる。ご気分がよくなられたようだということで、兵部卿宮も退出なさったりなどして、藤壺中宮の御前には人が少なくなった。
いつもおそば近くにお仕えしている女房は少なかったので、あちこちの物の後ろなどに控えている。
命婦の君などは、「どういった手立てで源氏の君をお出し申し上げましょう。また今夜も上気なさったら、お気の毒です」など、などとささやいて、考えこんでいる。
源氏の君は、塗籠の戸が細目に開いているのを、そっと押し開けて、御屏風の隙間に添って部屋にお入りになる。
めったにないご拝顔の機会であること、そのうれしさにつけても、源氏の君は、藤壺中宮の御姿を、涙を落として拝見なさる。
(藤壺)「まだとても苦しい。命も尽きてしまうのでしょうか」といって、外の方をご覧になっていらっしゃるその横顔は、言いようもなく優美に見える。
せめて御菓子だけでもと、差し入れて置いてある。蓋の箱などにも、きれいに飾りつけてあるが、藤壺中宮は中をご覧にもならない。
世の中をひどく思い悩んでおられるようすで、つくづくと物思いに沈んでいらっしゃるのは、たいそう痛々しく感じられる。
髪の生え具合、頭つき、御髪の垂れかかっているようす、限りなく美しく色づいているようすなどは、まったく、あの対の姫君(紫の上)と違うところがない。
源氏の君は、藤壺宮と紫の上が似ていることについて、ここ数年はすこしお忘れになっていたのだが、今あらためて、驚くばかり似ていらっしゃることをご覧になっていると、すこし物思いが晴れるお気持ちになられる。
気高くて、こちらが気後れしてしまうほどのご様子なども、まったく藤壺宮と紫の上とは違う女性だと区別もつけがたいのだが、やはり、限りなく昔からお慕い申し上げてきた心がそう思わせるのだろうか、藤壺中宮がたいそう素晴らしく、女ざかりになっておられるのことよと、たぐいなくお思いになるにつけて、源氏の君は心惑いなさって、そっと御帳の内になだれこんで、ご自分の御召し物の褄を引き鳴らしなさる。
その人とはっきりわかるほど、さっと香の香りがしたので、藤壺中宮は、呆れた恐ろしいこととお思いになって、そのままひれ臥してしまわれた。
(源氏)「せめてこちらを向いて私をご覧ください」と、源氏の君はじれったく辛くて、中宮の御衣をお引き寄せになると、中宮はその御衣を脱ぎすべらかせて、座ったまま後ずさりなさると、思いもかけず、御衣とともに御髪が、源氏の君の御手につかまれていたので、中宮はひどく情けなく、逃れがたい宿世のほどが思い知られて、たまらない思いをしていらした。
男も、多年、中宮への恋心を抑えなさっていらした御心がみな乱れて、うつつのさまではなく、あらゆる事を泣く泣くお恨み言申し上げなさるが、中宮は本当にうとましいとお思いになって、お答えにもならない。ただ、(藤壺)「気分がとても悪いのですから。このようでない折もあればお返事申し上げましょう」とおっしゃるが、源氏の君は尽きることのない御心具合を言いつづけなさる。
中宮は、さすがに気の毒とお聞きになるところも混じっていたのだろう。これまでも二人の間に過ちがなかったわけではないが、あらためて過ちを重ねることが、とてもくやしく思われるので、情愛深い接し方ではあるが、とてもうまくお逃れになって、今宵も明けてゆく。
源氏の君は、強いて中宮の御言葉に逆らい申し上げるのも畏れ多く、こちらが気恥ずかしくなるほど立派な中宮の御物腰なので、(源氏)「ただこのようにしてだけでも、時々ひどい愁いをさえ晴らすことができますものならば、何の大それた気持ちを起こしますでしょう」など、中宮のお気持ちをやわらげ申し上げるのだろう。
並大抵の逢瀬でさえ、このような御関係はしみじみと哀れ深いことも加わるものであるが、ましてこの御二人の場合は、世にたとえようもなさそうである。
夜が明けてしまったので、王命婦と弁が二人して君にお帰りいただこうと、さまざまなきついことを申し上げる。
中宮は、なかばは亡き人のような御ようすである。
源氏の君は中宮のそのご様子がお気の毒なので、(源氏)「私のような者がこの世に生きていると貴女がお耳に入れあそばすのさえ、ひどく恥ずかしいので、すぐに亡くなってしまうことも、また来世における罪となるに違いないことですよ」など申し上げなさるのも、中宮は、恐ろしいとお思いになるまでに、源氏の君は思いつめていらっしゃる。
(源氏)「逢ふことの…
(なかなか逢えない難しさが、今日にかぎらずっと続くのだとしたら、わたしはあと何度生まれ変わって嘆き嘆きして過ごせばよいのでしょう)
このように私が現世で貴女に執着することは、貴女の往生のさまたげともなりましょう」と申し上げなさると、中宮は、さすがにふっとため息をおつきになって、
(藤壺)ながき世の…
(長く幾世にわたる恨みを私の上に残しても、それは一方では、あなたの心の不誠実さから来ているのだと知っていただきたいのです)
何でもないように言ってのけられるようすが、どんなに言葉を尽くしてもかいがないような気持ちがするが、源氏の君は、中宮がお思いになっていることも、わが御ためにもおつらいので、我にもあらずという思いでお帰りになった。
語句
■かやうの事 朧月夜との逢瀬。前段参照。 ■かつは 一方では…。また一方では…とつづく。 ■うひうひしく 「初々し」は気持が落ち着かない。 ■春宮を見立てまつりたまはぬを… 藤壺中宮は宮中を退出して三条の里邸にいる。春宮はいまだ宮中にいる。 ■頼もしき人 後見人。朱雀帝を後見する右大臣のような権勢家。 ■にくき御心 源氏の君の、藤壺宮への恋心。 ■御胸をつぶしつつ 「胸をつぶす」は胸がつぶれるくらい思い悩むこと。 ■いささかもけしきをご覧じ知らず 桐壺院が藤壺中宮と源氏の関係をまったく知らないまま崩御したこと。まったく疑われもしなかったことが、かえって藤壺中宮の罪悪感を高めるのである。 ■よからぬこと 右大臣方がスキャンダルにつけこんで攻撃してくることを予想している。 ■御祈禱 源氏の恋心を止めてほしいと神に祈願する。「恋せじと御手洗川にせし禊神は受けずもなりにけるかな」(伊勢物語六十五段)などの歌が有名。 ■あさましうて 「あさまし」はあまりに意外なことに、驚き呆れること。 ■知る人なかりければ 「人」は藤壺中宮つきの女房をさす。 ■夢のやうにぞ 源氏と藤壺の逢瀬には「夢」「現」の語が多くみられる。『伊勢物語』における「男」と伊勢斎宮の逢瀬が想起される。「君や来しわれやゆきけむおもほえず夢かうつつか寝てかさめてか」(伊勢物語六十九段)。 ■あつかふ 面倒事を処理する。 ■男は 藤壺中宮のことを「宮」といい、源氏のことを「男」ということで、この逢瀬が源氏からの一方的なもので藤壺宮は終始拒んだということをしめす。 ■まがへば 「まがふ」は入り乱れる。 ■塗籠 周囲を壁で塗り込めた小さな部屋。衣類調度類を置く納戸。 ■御衣ども隠し持ちたる とっさのことで、源氏は下着姿のまま塗籠に押し込められた。女房たちは源氏の衣を小分けにして持って困惑している。 ■大夫 中宮大夫。中宮職《ちゅうぐうしき》の長官。中宮職は中宮の身の回りの事務全般を行う。 ■かくなん 源氏が塗籠の中にこもっていること。下着姿で。 ■いかにたばかりて 源氏の存在を知っているのは命婦・弁くらいで、他の女房たちは知らない。だから他の女房たちに気づかれずに源氏の君をお帰しするにはどうしたらいいか、命婦らは思案に暮れているのである。 ■御屏風のはさまに 戸の前に屏風が立ててある。源氏は戸と屏風の間にすべりこんで、屏風沿いに伝って、部屋にすべり入る。 ■めずらしく 昨夜逢っているのだが、闇の中であり、源氏は藤壺の顔を見ていない。昼の光の下で藤壺の顔を見るのは少年の日以来である(【桐壺 16】)。感動もひとしおである。 ■かたはら目 横から見た姿。横顔。 ■なまめかしう見ゆ 「なまめかし」はきゃしゃで優美であること。病気によって、ただでさえ優美な藤壺にさらに優美さがましていると源氏は見た。 ■なつかしきさま 「なつかし」は親しみがもてる。ここでは箱の蓋にさまざまに趣向をこらし飾り付けてあること。 ■世の中を 「世の中」は世間、人生全般であるとともに、源氏との関係をもさす。 ■年ごろすこし思ひ忘れたまへるつるを 藤壺宮は源氏から遠い世界に行ってしまったので、源氏はここ数年、直接お逢いする機会がなかった。だから藤壺宮と紫の上がどんなに似ているかということについても、ここ数年は考えてもいなかったのである。 ■すこしもの思ひのはれけどころある心地 藤壺の生き写しとして紫の上を育てるという、当初の計画が着実にすすんでいることを見て、源氏は少し心なぐさめられる。 ■御帳 仕切り幕。部屋の上部から垂れて、部屋の仕切りとする。 ■かかづらひ入りて 「かかづらふ」は関係する、の意だが、「かかづらひ入る」は不詳。 ■御衣の褄をひきならしたまふ 自分の衣の裾を持ち上げて、衣擦れの音を立てること。ここにいますよという合図。 ■御髪の取り添へられたりければ 源氏は藤壺の衣をつかんだ勢いで髪の毛までつかんだ。なので藤壺は逃れたくても逃れられない。藤壺はまたも罪を犯してしまうことを予感し、逃れがたい宿世のほどを思い知る。 ■ここら 多年。 ■なのめなること 世間並の、よくある逢瀬。 ■かようなる仲らひ 本来逢ってはならない、禁断の関係。 ■二人 命婦と弁。夜が明けてもなかなか帰らない源氏に対して、二人は厳しく諫言する。 ■逢ふことの… 「かたき」を「敵《相手》」と取る説も。 ■御ほだし 「ほだし」は自由を束縛するもの。ここでは往生のさまたげになるもの。源氏の藤壺に対す執着は、藤壺にとっても罪障となって往生のさまたげとなるという考え。 ■ながき世の… 「徒(あだ)」は不誠実で真心がないこと。 ■