第五段 不幸に愁にしづめる人の
■『徒然草』朗読音声の無料ダウンロード
【無料配信中】福沢諭吉の生涯
■【古典・歴史】YOUTUBEチャンネル
不幸に愁にしづめる人の、頭おろしなど、ふつつかに思ひとりたるにはあらで、有るかなきかに門さしこめて、待つこともなく明し暮したる、さるかたにあらまほし。
顕基中納言の言ひけん、配所の月、罪なくて見ん事、さも覚えぬべし。
口語訳
不幸にあって悲しみ沈んでいる人が頭をおろして出家するなど、軽率に思いこんでやったのではなく、いるのか、いないのかわからない様子に門をとざして、世の中に期待することもなく明かし暮らしている。そういうあり方こそ、好ましい。
顕基中納言が言ったという、配所の月を、罪の無い身の上で見たいという事。そんなふうに思われることだ。
語句
■不幸に 不幸にあって。 ■ふつつかに 軽率に。 ■思ひとる ■かた ■顕基中納言 源顕基(1000-1047)。醍醐源氏、安和の変で失脚した源高明の孫で、権大納言・源俊賢の子。後一条天皇の側近として仕えるが、後一条天皇崩御にともない出家。大原山・横川・醍醐に隠棲する。法名円照。朝夕琵琶を弾きつつ、配所の月を流されていない身の上で見たいと歌ったという。 ■配所の月 流された配流先で見る月。
メモ
■顕基中納言 配所の月
■追い出し部屋も気持ち次第。
前の章「第四段 後の世の事、心にわすれず」|次の章「第六段 子といふ物なくてありなん」
徒然草 現代語訳つき朗読