第五十七段 人の語り出でたる歌物語の、歌のわろきこそ
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人の語り出でたる歌物語の、歌のわろきこそ本意なけれ。少しその道知らん人は、いみじと思ひては語らじ。
すべて、いとも知らぬ道の物語したる、かたはらいたく、聞きにくし。
口語訳
人の語り出した歌物語の、歌のまずかった時は実にがっかりする。少し歌の道を知っている人は、そんな歌はひどいと思って語らないものだ。
万事、あまり知らない道の話をするのは、笑止であり、聞き苦しいものだ。
語句
■本意なし がっかりする。 ■かたはらいたし 笑止である。
メモ
■専門の道を尊重する兼好の価値観。
朗読・解説:左大臣光永