第九十四段 常盤井相国、出仕し給ひけるに

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常盤井相国、出仕し給ひけるに、勅書を持ちたる北面あひ奉りて、馬より下りたりけるを、相国、後に、「北面なにがしは、勅書を持ちながら下馬し侍りし者なり。かほどの者、いかでか君につかうまつり候ふべき」と申されければ、北面を放たれにけり。

勅書を馬の上ながら捧げて見せ奉るべし。下(お)るべからずとぞ。

口語訳

常盤井相国が出仕された時に、勅書を持った北面が相国にお会いして、馬から下りたのを、相国、後に、「北面なにがしは、勅書を持ったまま下馬しました者です。このような者が、どうして君にお仕えできましょうか」と申されたので、北面をクビになった。

勅書を馬の上に乗ったまま、捧げてお見せするべきだったのだ。下りるべきではなかった。

語句

■常盤井相国 西園寺実氏。後深草・亀山天皇の外祖父として権威をふるった。西園寺公経の子。西園寺家は承久の乱以降、都で栄達を極めた。寛元4年(1246年)太政大臣。京極常盤井に館があったため。文永6年(1269)没。76歳。 ■勅書 天皇の勅命をしたためた文書。 ■北面 院の御所を警護した。院の御所の北面に伺候所があったので北面という。

メモ

●西園寺家→鹿苑寺金閣
●承久の乱、西園寺公経

朗読・解説:左大臣光永

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