第百六十六段 人間の営みあへるわざを見るに

■『徒然草』朗読音声の無料ダウンロード
■【古典・歴史】メールマガジン
■【古典・歴史】YOUTUBEチャンネル

人間の営みあへるわざを見るに、春の日に雪仏を作りて、そのために金銀・珠玉の飾りを営み、堂を建てんとするに似たり。その構へを待ちて、よく安置(あんぢ)してんや。人の命ありと見るほども、下より消ゆること、雪のごとくなるうちに、営み待つ事甚(はなた)だ多し。

口語訳

人間の互いに励みあっている仕事を見ると、春の日に雪の仏を作って、そのために金銀・宝玉の飾りを取り付け、堂を建てることに似ている。その堂が完成するのを待って、雪仏をうまく安置できるだろうか。人の命はまだあると見ているうちに、下から消えていくことは雪のようである中で、あくせく働いて何かを期待していることが、とても多い。

語句

■よく安置してんや 仏を安置することができるだろうか。「よく~す」は「~できる」。「や」は反語。 ■営み待つ あくせくと働いて、何かを期待する。

メモ

■比喩のたくみさ
■無常

朗読・解説:左大臣光永

■『徒然草』朗読音声の無料ダウンロードはこちら
■【古典・歴史】メールマガジン
【古典・歴史】YOUTUBEチャンネル