第二百二十四段 陰陽師有宗入道、鎌倉よりのぼりて
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陰陽師有宗入道、鎌倉よりのぼりて、尋ねまうで来(きた)りしが、まづさし入りて、「この庭のいたづらに広きこと、あさましく、あるべからぬ事なり。道を知る者は植うることを努(つと)む。細道ひとつ残して、皆畠(はたけ)に作り給へ」と諌め申しき。
誠に、少しの地をもいたづらに置かんことは、益(やく)なき事なり。食ふ物、薬種(やくしゅ)など植ゑおくべし。
口語訳
陰陽師有宗入道が鎌倉から京に上ってきて、私の館を尋ねてやってきたが、家の中に入ってまず、「この庭が無駄に広いことは、呆れかえるほどで、あってはならない事です。道理を知る者は植物を植えることに励みます。細道一つ残して、皆畑にお作りなさい」と忠告いたしました。
本当に、少しの地をも無駄に置くことは、無益なことだ。食う物、薬になる植物などを植えておくべきである。
語句
■陰陽師有宗入道 安倍有宗。正四位下陰陽頭。安倍晴明の子孫。陰陽寮の職員。陰陽五行説に基づき吉凶を占うなどする。 ■尋ねまうで来りしが 私の家を尋ねてやってきたが。「まうで来る」はやって来る。 ■
メモ
■安倍有宗
■瑞泉寺⇒嵯峨の天龍寺・西芳寺の礎
朗読・解説:左大臣光永