第十三段 ひとり灯のもとに文をひろげて

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ひとり灯(ともしび)のもとに文(ふみ)をひろげて、見ぬ世の人を友とするぞ、こよなう慰むわざなる。

文は文選(もんぜん)のあはれなる巻々、白氏文集(はくしもんじゅう)、老子のことば、南華の篇。此(こ)の国の博士どもの書ける物も、いにしへのは、あはれなること多かり。

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口語訳

一人ともしびの下に書物を広げて、会うことのできない昔の人を友とすることは、とても慰められることである。

文は文選の味わい深い巻々。白氏文集、老子、荘子、わが国の知識人たちの書いたものも、(今のものはともかく)昔のものは、味わい深いものが多い。

語句

■文選 梁の武帝の太子、昭明太子の選。春秋時代の周から六朝時代の梁まで約1000年間の詩歌・散文を集める。全30巻。聖徳太子の時代にすでに輸入され、知識人に深い影響を与えた。『枕草子』にも「ふみは、文集、文選、史記、五帝本紀、願文、博士の申文」とある。この枕草子の文章は徒然草の本段に影響を与えている。 ■白氏文集 唐の白楽天の詩文集。平安時代に日本に藤原公任によって紹介され、知識人の間で愛好された。全75巻だったが一部消失して71巻が今に伝わる。 ■老子 『老子道徳経』。周の老子(老タン)著と仮託される書。 ■南華の篇 『荘子』。戦国時代の荘周の書。『南華真経』とも。「南華」は荘子が隠棲した場所の名。『老子』と並び道家の根本法典とされる。 ■此(こ)の国の博士どもの書ける物 ■博士 狭義には大学寮に属した文章博士など。広義には知識人。

メモ

■読書人は孤独でない。
■もろともにあはれと思へ山桜花よりほかに知る人もなし
■飲み会に出てはいけない。

朗読・解説:左大臣光永

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