古事記(一)はじめに現れた神々

こんにちは。左大臣光永です。

9月に入りましたが、まだまだ暑いですね!昨日、嵐山を歩いていたら稲が青々と繁っていて、すっ…すっとトンボが飛び交い、ああ…エネルギーが満ち溢れているなぁと実感しました。東京にいた頃はまわりに田んぼがなく、こういうことで季節感を感じることはなかったので、新鮮に思いました。

さて先日再発売しました「語り継ぐ 日本神話」
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ご好評をいただいております。ありがとうございます。

しばらくこの商品にあわせて、『古事記』の本文(書き下し)を皆様とご一緒に読んでいきます。

今日は『古事記』本編の書き出しにあたる、「はじめに現れた神々」です。

↓↓↓音声が再生されます↓↓

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(サブタイトルは便宜的につけたものです)

では、読んでいきましょう。ズラズラッと神々の名前が並びます。図を見ながらお読みくだされば、内容がつかみやすいと思います。

天地《あめつち》初めて発(あらは)れし時、高天原《たかまがはら》に成りし神の名は、天之御中主神《あめのみなかぬしのかみ》。次に、高御産日神《たかみむすひのかみ》。

次に、神産巣日神《かむむすひのかみ》。此の三柱《みはしら》の神は、並《とも》に独神《ひとりがみ》と成り坐《ま》して、身を隠しき。

次に、国稚《くにわか》く浮ける脂の如くして、くらげなすただよへる時、葦牙《あしかび》の如く萌え騰《あが》れる物に因《よ》りて成りし神の名は、宇摩志阿訶備比古遅神《うましあしかびひこぢのかみ》。

次に、天之常立神《あめのとこたちのかみ》。此《こ》のニ柱《ふたはしら》 の神も亦《また》、並《とも》に独神《ひとりがみ》と成り坐《ま》して、身を隠しき。

上《かみ》の件《くだり》の五柱《いつはしら》の神は、別天つ神《ことあまつかみ》なり

次に、成し神の名は、国之常立神《くにのとこたちのかみ》。次に、豊雲野神《とよくもののかみ》。此のニ柱の神も亦、独神《ひとりがみ》と成り坐して、身を隠しき。

次に成りし神の名は、宇比地邇神《うひぢにのかみ》。次に、妹《いも》須比智邇神《すひちにのかみ》。次に、角杙神《つのぐひのかみ》。次に、妹《いも》杙神《いくぐひのかみ》。

次に、意富斗能地神《おほとのぢのかみ》。次に、妹大斗乃弁神《いもおほとのべのかみ》。次に、於母陀流神《おもだるのかみ》。次に、妹《いも》阿夜訶志古泥神《あやかしこねのかみ》。

次に、伊耶那岐神《いざなきのかみ》。次に妹《いも》伊耶美岐神《いざなみのかみ》。

上《かみ》の件《くだり》の、国之常立神《くにのとこたちのかみ》より以下、伊耶美岐神《いざなみのかみ》より前、あわせ称して、神世七代《かむよななよ》。

上《かみ》の二柱《ふたはしら》の独神《ひとりがみ》は、各《おのおの》一代《ひとよ》と伝《い》ふ。次に双《なら》ぶ十《と》はしらの神は、各《おのおの》二神を合わせて一代《ひとよ》と伝《い》ふ。


天と地がはじめて出来た時、高天原《たかまがはら》に成った神の名は、

天之御中主神《あめのみなかぬしのかみ》。

次に、高御産日神《たかみむすひのかみ》。

次に、神産巣日神《かむむすひのかみ》。

此の三柱《みはしら》の神は、ともにに独神《ひとりがみ》として、身を隠した。

(神様のことを一柱、二柱と数えるのは、神が天から地上に下ってくる運動性を表しているとも、ご神木が神社にありますねね。古来、木は神とみなされていました。そのため神を木と見て柱と数えるなど、いろいろ説があります)

次に、地上世界がまだ若々しく浮いた脂のようで、くらげがただよっているような(ふにふにゃした)状態の時、葦が芽をふくように萌え上がった物によって成った神の名は、

宇摩志阿訶備比古遅神《うましあしかびひこぢのかみ》。

次に、天之常立神《あめのとこたちのかみ》。

このニ柱《ふたはしら》 の神もまた、ともにに独神《ひとりがみ》として、身を隠した。

以上の五柱《いつはしら》の神を、別天つ神《ことあまつかみ》という。

次に成った神の名は、国之常立神《くにのとこたちのかみ》。

次に、豊雲野神《とよくもののかみ》。

この二柱の神も独り神として、身を隠した。

次にご夫婦の神々が現れます。

宇比地邇神《うひぢにのかみ》。次に、その妻・須比智邇神《すひちにのかみ》。

次に、角杙神《つのぐひのかみ》。次に、その妻・活杙神《いくぐひのかみ》。

次に、意富斗能地神《おほとのぢのかみ》。
次に、その妻・大斗乃弁神《おほとのべのかみ》。

次に、於母陀流神《おもだるのかみ》。
次に、その妻・阿夜訶志古泥神《あやかしこねのかみ》。

次に、伊耶那岐神《いざなきのかみ》。
次にその妻・伊耶美岐神《いざなみのかみ》。

国之常立神《くにのとこたちのかみ》から、伊耶美岐神《いざなみのかみ》までを神代七代という。

前半の二柱の独神《ひとりがみ》は、おのおのを一代といい、後半の十柱の神々はご夫婦の二神をあわせて、一代という。

………
……

というわけで、初発の神々…世界に初めてあらわれた神々を語ったくだりです。有名なイザナキ・イザナミ夫婦の登場までに、こんなにも色々出てきているわけですね。

普通、神話では天地創造から語られますが、『古事記』は天地創造の様子を一切語りません。ただ天地創造の頃にあらわれた神々の名を列挙していきます。ぶっきらぼうなだけに、想像力を刺激される書き出しです。

明日は「神の結婚」です。お楽しみに。

百人一首歌人・猿丸大夫をまつる猿丸神社

先日、宇治田原で百人一首歌人・猿丸大夫(さるまるだゆう)をまつる猿丸神社に行ってきました。宇治田原は京都と滋賀の境近くにある、お茶で有名な集落です。

その宇治田原から滋賀に抜ける街道沿いに、猿丸神社は建っています。


駐車場の脇に、猿丸の井戸。チロチロと清水が流れていました。


奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の
声聞く時ぞ秋は悲しき

猿丸太夫の歌は百人一首5番に採られていますが、その人物については詳しいことはわかりません。

三十六歌仙の一人に数えられ『古今和歌集序文』「真名の序」に「大友黒主の歌は、古(いにしえ)の猿丸大夫の次(つぎて)なり」とあるので、少なくとも大友黒主の生きた平安時代初期よりも、以前の人物です。

しかし、百人一首に猿丸大夫作として採られたこの歌も、古今集では「よみ人知らず」の歌であり、奈良時代から平安時代にかけて、しだいに猿丸大夫作とされていったようです。

その猿丸大夫をまつった猿丸神社に行ってきました。


狛犬ならぬ狛猿が拝殿の両脇に立ちます。


拝殿にはこのような…こぶつきの木がたくさん奉納されています。


何でしょうかこれは?

実は猿丸神社は瘤取りの神・癌封じの神としても信仰を集めており、これらコブつきの木は病気が治った人々が奉納したものだそうです。

また宇治田原はお茶の産地ですから、猿丸神社はお茶・水とも深いかかわりを持っています。毎月13日の例祭の時、境内にある壺のところでお茶の水を汲むということです。


神主さまが非常に話好きの方で、猿丸神社の所以について、とうとうと語ってくださいました。

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上巻「神代(かみよ)篇」は
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アマテラスオオミカミやスサノオノミコトの活躍、
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神武天皇の時代まで。

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本日も左大臣光永がお話しました。
ありがとうございます。ありがとうこざいました。

朗読・解説:左大臣光永
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