古事記(六)スサノオとアマテラス

こんにちは。左大臣光永です。

昨日、二条城の南の神泉苑をぶらついてたら、狛犬の頭の上にちょこんとスズメがとまって、しきりにキョロキョロしてたのが可愛かったです。まるで狛犬とスズメとコンビで見張りをやっているようで、微笑ましかったです。

さて本日は『古事記』の六回目「スサノオとアマテラス」です。

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前回は、「みそぎ」の話でした。黄泉の国から命からがら逃げ帰ったイザナキがみそぎをする。その時、左の目を洗うとアマテラスオオミカミが、右の目を洗うとツクヨミノミコトが、鼻を洗うとスサノオノミコトが生まれた。

イザナキは、生まれてきた三柱の神に、それぞれ別の国を統治するよう言い渡す。アマテラスオオミカミには高天原を。ツクヨミノミコトには夜の食国《おすくに》を。スサノオノミコトには海原を。

しかしスサノオノミコトだけは父の言いつけに従わず、もう中年になってるのに、泣いてばかりいた。

なぜ泣く。母のいる根堅州国《ねのかたすのくに》に参りたいのです。なに!そんなこと言うならお前はここに置いておけぬ!

こうしてスサノオが追放される、ところまででした。

本日は「スサノオとアマテラス」です。

追放されることになったスサノオは、出発の前に姉であるアマテラスオオミカミに挨拶していこうと、アマテラスの宮殿を訪ねます。しかし、アマテラスはそれをスサノオの襲撃と勘違いして臨戦態勢を取ります。
↓↓↓↓

故《かれ》、是《ここ》に、速須佐之男命《はやすさのをのみこと》の言はく、

「然らば、天照大御神に謂《もー》して罷らむ。乃ち上がりて天に参る時、山川悉《ことごと》く動き、国土《くにつち》皆震《ふる》ひき。爾《しか》くして、天照大御神《あまてらすおおみかみ》、聞き驚きて詔《のりたま》はく、

「我《あ》がなせの命《みこと》の上《のぼ》り来る由《ゆえ》は、必ず善《よ》き心ならじ。我《あ》が国を奪はんと欲《おも》ふによってなり」

乃《すなわ》ち御髪《みかみ》を解き、御《み》みづらを纏《ま》きて、乃《すなわ》ち左右《ひだりみぎ》の御《み》みづらに、亦《また》、御縵《みかづら》に、亦《また》、左右の御手《みて》に、各《おのおの》持てる八尺《やさか》の勾玉《まがたま》の五百津《いほつ》のみすまるの珠を纏《ま》き持ちて、

そびらには、千入《ちのり》の靫《ゆき》を負ひ、ひらには、五百入《いほのり》の靫《ゆき》を附け、亦《また》、いつの竹鞆《たかとも》を取り佩かして、弓腹《ゆばら》を振り立てて、堅庭《かたにわ》は、向股《むかもも》に蹈《ふ》みなづみ、沫雪《あわゆき》の如く蹶《く》ゑ散らして、いつの男《を》と建《たけ》ぶ。蹈《ふ》み建《たけ》びて待ちて問ひしく、

「何の故《ゆえ》にか上《のぼ》り来たる」

爾《しか》くして、速須佐之男命《はやすさのをのみこと》答えて白《もー》ししく、

「僕《やつかれ》は、邪《よこしま》な心無し。唯《ただ》し、大御神《おおみかみ》の命《みこと》以て、僕《やつかれ》が哭《な》きいさちる事を問ひ賜ふが故に、白しつらく、

『僕《やつかれ》は、妣《はは》が国に往《ゆ》かんと欲《おも》ふを以て、哭《な》く』 

爾《しか》くして、大御神《おおみかみ》の詔《のりたま》はく、

『汝《なむち》は、此《この》国に在るべからず』 

神やらひやらひ賜ふが故に、罷り往《ゆ》かむ状《かたち》を謂《もー》さむと以為《おも》ひて、参《ま》ゐ上《のぼ》れらくのみ。異心《ことごころ》無し」

爾《しか》くして、天照大御神《あまてらすおおみかみ》の詔《のりたま》ひしく、

「然らば、汝《なむち》が心の清く明るきは、何を以て知らむ」

是《ここ》に、速須佐之男命《はやすさのおのみこと》の答えて白《もー》ししく、

「各《おのおの》うけひて子を生まむ」

さてここに、速須佐之男命《はやすさのおのみこと》が言うことに、

「では、天照大御神に申してから根堅州国に参ろう」

そう言って、ただちに天に参上した時、山と川がことごとく動き、国土が皆震えた。

そこで天照大御神はこれを聞いて驚いておっしゃることに、

「私の弟である命《みこと》が高天原に上ってくるわけは、きっと善い心からではあるまい
私の国を奪おうと思っているに違いない」

そうおっしゃって、ただちに御髪を解いて、男性の髪型である「みづら」に髪を巻いて、その左右の御みづらに、また、左右の御手に、それぞれ八尺《やさか》の勾玉を緒でたくさん貫いた玉飾りを巻きつけ、

「そびら」…背の鎧には千入《ちのり》の靫《ゆき》…千本の矢の入った矢入れを背負い、「ひら」…鎧の胸には五百本の矢の入った矢入れをつけ、また、「いつの竹鞆《たかとも》」…威力のある竹製の鞆を取り佩いて、

(鞆は、弓を射る時に左腕に巻く丸い革製の道具。矢を放った後の弦が腕をはじくことを防ぐ)

弓腹《ゆばら》…弓の内側を振り立てて、堅い土の庭に股が埋まるほど踏み込み、地面を沫雪のように毛散らして、雄々しく迎え撃つ。

雄々しく足を踏み鳴らして、待ち構えて問う。

「何しに上ってきたか」

そこで速須佐之男命《はやすさのをのみこと》が答えて言うことに、

「私には悪い心はありません。ただ、父イザナキの大御神の命《みこと》が、私が泣きわめいていることを質問されたので、申し上げたのです。『私は、母の国の行きたくて泣くのです』と。

すると、父イザナキの大御神がおっしゃいました。『お前はこの国にいてはならぬ』そうおっしゃって、私を追放なさったので、まかり行くことになった事の次第を申し上げようと以て参上しただけです。他に思う所はありません」

そこで天照大御神がおっしゃった。

「では、お前の心が清く明るいことは、どうやって知れるのか」

そこで速須佐之男命《はやすさのをのみこと》が答えて申し上げた。

「各々うけひを行って子を生みましょう」

……

うけひとは古代の占いのことです。アマテラスとスサノオと、お互いに子を生んで、その子のありようによって、スサノオが清い心か、それとも邪な心か占おうというわけです。

明日に続きます。

いただいたお便りから

パリに住んでいます、
半年くらいでしょうか?杜甫の詩がきっかけで、左大臣さんのコンテンツを拝読しています。
日本では大阪に住んでいるので、京都に来られてなんだか近くなった気がしています。

今日メッセージしたのは、今回の配信内容の8月いっぱいお店が休みだったことについて、です。
パリも京都のように、商店のバカンスはひと月ほどと日本に比べると長く、まだ空いてないお店もあります!
多くは、この休み期間に、店内の改装をしているのですが、終わりきらず、まだ休んでいるところもあります。
昨日はそれで、レストランに行けませんでした笑

私はパリに来てから、日本よりも大変に営業時間の短い習慣を不便だと思うこともありますが、逆に日本が働きすぎだよな、と思っていて、日本もこんな風に、休みを増やしてもかまわないのにと思っていました。
京都はパリのようにしっかり休むんだなと思って、なんだかおかしいな、おもしろいなと思い、メッセージしました。

また、楽しみにしています。

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本日も左大臣光永がお話しました。
ありがとうございます。ありがとうこざいました。

朗読・解説:左大臣光永
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