古事記(九)スサノオの追放と五穀の起源

こんにちは。左大臣光永です。

私は人混みがけっこう好きなんですよ。それはたくさんの人々が生きて、動いて、経済が動いている。その実感がこみ上げて、嬉しくなるからです。京都に来てからは東京ほどキョウレツな人混みがないので、物足りなく思っていました。そこで、先日、清水寺に行ってきました。産寧坂も清水坂もえらい人混みで、楽しかったです。週末の秋葉原もかくやという勢いで、元気が出ました。

さて本日は『古事記』の九回目「スサノオの追放と五穀の起源」です。

↓↓↓音声が再生されます↓↓

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前回は「天の岩屋戸」の話でした。アマテラスオオミカミが岩屋にこもってしまい、世界は闇に閉ざされる。困った神々は相談して、岩屋の前で御幣を捧げ、アメノウズメ面白おかしく踊ったところ、あら何かしらとアマテラスオオミカミが戸を開けた所をタヂカラオノカミがえいやと引っ張り出した。それで世界に光が戻ったという話でした。

そこから続きます。高天原の神々が、スサノオノミコトを追放する場面です。
↓↓↓↓

是《ここ》に、八百万《やおよろづ》の神、共に議《はか》りて、速須佐之男命《はやすさのおのみこと》に千位《ちくら》の置戸《おきと》を負はせ、亦《また》、鬚と手足の爪を切り、祓へしめて、神《かむ》やらひやらひき。

又、食物《くらひもの》を大気都比売神《おほげつひめのかみ》に乞ひき。爾《しか》くして、大気都比売《おほげつひめ》、鼻・口・及び尻より種々《くさぐさ》の味物《うましもの》を取り出して、種々《くさぐさ》に作り具《そな》へて進める時に、速須佐之男命、其《そ》の態《わざ》を立ち伺ひて、穢し汚して奉進《たてまつ》ると為《おも》ひて、乃《すなわ》ち其《そ》の大宣津比売神《おほげつひめのかみ》を殺しき。

故、殺さえし神の観に生《な》りし物は、頭に蚕《かいこ》生り、二つの目に稲種《いなだね》生り、二つの耳に粟《あわ》生り、鼻に小豆生り、陰生《ほと》に麦生り、尻に大豆生る。

故《かれ》是《ここ》に、神産巣日御祖命《かむむすひのみおやのみこと》、玆《こ》の成れる種を取らしめき。

そこで八百万の神々は、共に相談して、スサノオノミコトにたくさんの罪を償うための品物を科した。つまり債務を負わせた。また髭と手足の爪とを切って、罪をあがなわせて、追放した。

また、八百万の神々はオホゲツヒメノ神に食べ物を求めた。そこで、オホゲツヒメは鼻・口と尻からさまざまな食物を取り出して、さまざまに料理してスサノオノミコトに奉る時に、スサノオノミコト、その様子を立ち伺って、汚くして食べ物を出しているのだと思って、たちまちそのオホゲツヒメノ神を殺してしまった。

そこで、殺された神の身に成った物は、頭に蚕が成り、2つの目に稲種が成り、2つの耳に粟が成り、鼻に小豆が成り、陰部に麦が成り、尻に大豆がなった。

そこで、カムムスヒノミオヤノ命が、この成った穀物の種を取らせた。

……

「千位《ちくら》の置戸《おきと》を負はせ」…「千位の置戸」はたくさんの台の上に乗せた品物のことで、罪をあがなうために差し出す品々です。それがスサノオに課せられた。つまり、債務を負わせたということです。

また、髭と爪を切るのは、罪穢れを祓うための呪術的な儀式と思われます。

次のオホゲツヒメのくだりはキョウレツです。スサノオがこれから地上世界に旅立つにあたって、八百万の神々はオホゲツヒメに頼んで料理を用意させた。なんかいいにおいがしてきたなあ。何ができるんだろう。スサノオが期待して覗いてみると、オホゲツヒメは鼻と口と尻からずぼぼぼーーーと食べ物を放り出して、それで料理を作っていた。

げえーーっ汚ねえ!
そんなもん俺に食わせる気か!

ズバーー。

スサノオ、オホゲツヒメを瞬殺。

で、死んだオホゲツヒメの死体から蚕や穀物の種が成ったと。

穀物の起源を語ったくだりです。スサノオがオホゲツヒメを殺したために世界に穀物がもたらされたと。ここでも「天の岩屋戸」の話と同じく、「死と復活、そして穀物の収穫」というテーマが繰り返されています。

穀物は収穫の時に刈り取られる。その時に穀物の神は死ぬ。しかし種をまくことで、穀物の神は復活する。そうやって穀物の神は毎年死んでは生まれ死んでは生まれて、豊かな恵みをもたらす…

古代の人々が穀物の神に対して持っていた信仰を、このオホゲツヒメの話は反映しているようです。

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本日も左大臣光永がお話しました。
ありがとうございます。ありがとうこざいました。

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朗読・解説:左大臣光永
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