『古事記』第22回 コノハナノサクヤビメ
早朝に散歩していると、自転車通勤の人が多いのに気づきます。京都市内は狭いので、市内に家があって会社があればバスや電車より自転車のほうが便利かもしれません。鴨川の土手を出勤中の会社員が自転車で飛ばしていくのが、サワヤカで、よいです。
本日は『古事記』の第22回、「コノハナノサクヤビメ」です。
日向国(ひむかのくに)高千穂に降り立ったニニギノミコトは、ある日笠沙の岬で美しい少女を見初めます。少女の名はコノハナノサクヤビメ。一目で気に入ったニニギは結婚を申し込みます。
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『古事記』過去配信ぶん
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是《ここ》に、天津日高日子番能瓊々芸尊《あまつひたかひこほのににぎのみこと》、笠沙《かささ》の御前《おまえ》に、麗《うつく》しき美人《をとめ》に偶《あ》ひき。
爾《しか》くして、問ひしく、
「誰《た》が女《むすめ》ぞ」
答へて白《もー》ししく、
「大山津見神《おほやまつみのかみ》の女《むすめ》、名は神阿多都比売《かむあたつひめ》、亦《また》の名は、木花之佐久夜毘売《このはなのさくやびめ》と謂《い》ふ」
又《また》、問ひしく、
「汝《なむち》が兄弟《はらから》有りや」
答へて白《もー》ししく、
「我《あ》が姉、石長比売《いわながひめ》在リ」
爾《しか》くして詔《のりたま》ひししく、
「吾《あれ》は、汝《なむち》と目合《めひあ》はむと欲《おも》ふ。奈何《いか》に」
答へて白《もー》ししく、
「僕《やつかれ》は、白《もー》すこと得ず。僕《やつかれ》が父・大山津見神《おほやまつみのかみ》、白《もー》さむ」
ここに、天津日高日子番能瓊々芸尊《あまつひたかひこほのににぎのみこと》は、笠沙《かささ》の岬にて、美しい少女に出会った。それで質問した。
「誰の娘か」
娘は答え申して、
「大山津見神《おほやまつみのかみ》の娘、名は神阿多都比売《かむあたつひめ》、またの名は、木花之佐久夜毘売《このはなのさくやびめ》といいます」
また瓊々芸尊が質問した。
「お前には兄弟がいるのか」
娘は答え申した。
「わが姉、石長比売《いわながひめ》がおります」
それで瓊々芸尊は仰せになった。
「私は、お前と結婚しようと思う。どうか」
娘は答え申した。
「私でお返事申し上げることができません。私の父大山津見神が申し上げるでしょう」
■笠沙 薩摩国の海岸と思われる。
故《かれ》、其《そ》の父・大山津見神《おほやまつみのかみ》に乞ひに遣《や》りし時に、大きに歓喜《よろこび》て、其の姉・石長比売《いわながひめ》を副《そ》へて、百取《ももとり》の机代《つくえしろ》の物を持たしめて、奉《まつ》り出《い》だしき。
故《かれ》爾《しか》くして、其の姉は、甚《いと》凶醜《みにく》きに因《よ》りて、見畏みて返し送りき。唯《ただ》其の弟《おと》木花之佐久夜毘売《このはなのさくやびめ》のみを留めて、一宿《ひとよ》、婚《あひ》を為《し》き。
それで、その父・大山津見神《おほやまつみのかみ》に結婚の約束を求めて使いをやったところ、大山津見神は大いに喜んで、その姉石長比売《いはながひめ》を添えて、たくさんの結納の品を机の上に置いたのをもたせて、花嫁として献上した。さてそうして、その姉はたいそう醜かったので、瓊々芸尊は見て恐れて、返し送り、ただそのい妹の木花之佐久夜毘売《このはなのさくやびめ》のみを留めて、一晩床を共にした。
■百取《ももとり》多くの結納の品。 ■机代《つくえしろ》 机に載せるもの。
爾《しか》くして、大山津見神《おほやまつみのかみ》、石長比売《いわながひめ》を返ししに因《よ》りて、大きに恥じて、白《もー》し送りて言ひしく、
「我《あ》が女《むすめ》二並《ふたりとも》に立て奉《まつ》りし由《ゆゑ》は、石長比売《いわながひめ》を使はば、天神御子《あまつかみみこ》の命、雪零《ふ》り風吹くとも恒《つね》に石《いわ》の如くして、恒に堅《かちは》に動かず坐《いま》さむ、亦《また》、木花之佐久夜比売《このはなのさくやびめ》を使はば、木花《このはな》の栄ゆる如く栄え坐《ま》さむとうけひて、貢進《たてまつ》りき。此《か》く、石長比売《いわながひめ》を返らしめて、独《ひと》り木花之佐久夜比売《このはなのさくやびめ》を留むるが故に、天神御子《あまつかみみこ》の御寿《みいのち》は、木《こ》の花のあまひのみ坐《いま》さむ」
故《かれ》是《これ》を以《もち》て、今に至るまで、天皇命等《すめらみことたち》の御命《みいのち》は、長くあらぬぞ。
こうして、大山津見神《おほやまつみのかみ》は、石長比売《いわながひめ》が返されたために、たいそう恥じて、申し送って言うことに、
「我が娘二人を一緒に花嫁として献上した理由は、石長比売を使えば、天つ神御子の命は、雪降り風吹くとも、常に岩のように、いつまでも固く動かずにいらっしゃるだろう。また、木花之佐久夜比売を使えば、木の花が栄えるように栄えますだろうと占って、献上したのである。このように石長比売を返して、独り木花之佐久夜比売だけを留めたため、天つ神御子の御命《みいのち》は、木の花のように短くありますでしょう」
それでこのために、今に至るまで、代々の天皇の御命は、(ふつうの人間と同じく)短いのである。
故《かれ》、後に木花之佐久夜毘売《このはなのさくやびめ》、参《ま》ゐ出《い》でて白《もー》ししく、
「妾《あれ》は、妊身《はらみ》ぬ。今、産む時に臨みて、是の天神之御子《あまつかみのみこ》、私に産むべくあらぬが故に、謂ふ」
爾《しか》くして、詔《のりたま》ひしく、
「佐久夜毘売《さくやびめ》、一宿《ひとよ》にや妊《はら》みぬ。是《これ》、我《あ》が子に非《あら》ず。必ず国つ神の子ならむ」
さて、後に木花之佐久夜毘売《このはなのさくやびめ》が瓊瓊杵尊の前に参上して申し上げた。
「私は妊娠しました。今、産む時に臨んで、この天つ神の御子は、私だけの判断で産むわけにはいかないので、申し上げます」
そこで瓊瓊杵尊は仰せになった。
「佐久夜毘売は一夜の交わりで妊んだというのか。これは、我が子ではあるまい。きっと国つ神の子であろう」
爾《しか》くして、答へて白《もー》さく、
「吾《あ》が妊める子、若《も》し国つ神の子ならば、産む時に幸《さき》く非《あら》じ。若し天つ神の御子ならば、幸《さき》くあらむ」
即《すなわ》ち戸の無き八尋殿《やひろどの》を作りて、其の殿の内に入《い》り、土を以《もち》て塗り塞ぎ、方《まさ》に産む時、火を以《もち》て其の殿に著《つ》けて産みき。
故《かれ》、其の火の盛んに焼ける時、生まれし子の名は、火照命《ほでりのみこと》。此の者、隼人の《はやと》阿多君《あたたのきみ》が祖《おや》ぞ。
次に、生みし子の名は、火須勢理命《ほすせりのみこと》。次に、生みし子の御名は、火遠理命《ほをりのみこと》、亦《また》の名は、天津日高日穂々手見命《あまつひたかひこほほでみのみこと》。三柱《みはしら》。
そこで木花之佐久夜毘売は答えて申し上げた。
「私の妊んだ子がもし国つ神の子ならば、産む時にただではすまないでしょう。もし天つ神の子なら無事に生まれるでしょう」
すぐに戸口の無い広い産殿を作り、その殿の内に入り、土で入り口を塗りふさいで、いよいよ産もうとする時に、火をその殿に放って、(その中で)産んだ。
それで、その火の盛んに燃える時に生んだ子の名は火照命《ほでりのみこと》。これは隼人の《はやと》阿多君《あたたのきみ》の祖《おや》である。
次に、生んだ子の名は、火須勢理命《ほすせりのみこと》。
次に、生んだ子の御名は、火遠理命《ほをりのみこと》、またの名は、天津日高日穂々手見命《あまつひたかひこほほでみのみこと》。これら三柱《みはしら》である。
■阿多君 南九州の部族の名。
次回「『古事記』23回「海幸彦・山幸彦」に続きます。お楽しみに。
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「語り」による「聴く」日本神話。上巻・下巻あわせて『古事記』のほぼ全体を、現代の言葉でわかりやすく語っています。
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